第5話3次審査 知力審査 セクション3 採点と順位

第5話3次審査 知力審査

セクション3 採点と順位


答案回収の合図が鳴る。


「筆を置いてください」


司祭の声が、会場の緊張を切り替えた。


エリカはすでに書き終えている。


羽根ペンを置く音も優雅だ。


クラリスは最後の一文を整えてから、静かに筆を離した。


ノエルは、ぎりぎりまで何かを書いていた。


(もうどうでもいい)


それでも、空欄はほとんどない。


ミレーユは、花を描き終えたところで満足げに頷く。


「完成ですぅ」


答案の右下には、小さくサインのような花。


バルバラは腕を組み、空を睨んでいる。


机の上には破片。


完全なる棄権。


 


答案が運ばれ、審査席へ。


観客席がざわつく。


「満点は出るのか?」 「公爵令嬢は強そうだ」


エリカは余裕の微笑み。


クラリスは静観。


ノエルは机に肘をつき、ぼんやり。


ミレーユは周囲をきょろきょろ。


バルバラは不満全開。


「文字が悪い」


 


しばらくして、司祭が立ち上がる。


会場が静まり返る。


「結果を発表いたします」


緊張が走る。


「第一位――エリカ・ヴァレンシュタイン」


歓声。


拍手。


どよめき。


エリカがゆっくりと立ち上がる。


「当然ですわ」


扇を開く。


「この程度の問題、つまらないほど基本的でした。王国比類なき名門公爵令嬢の私に解けない問題などございませんのよ」


高らかに笑う。


「おほほほほほほ!」


観客席の一部が盛り上がる。


「さすが公爵家」 「満点だと?」


司祭が続ける。


「満点でございます」


会場が再びざわつく。


完璧。


知力審査、完全制覇。


 


「第二位――クラリス・アルトレア」


拍手。


クラリスが一礼する。


「基本的な問題でした」


控えめな言葉。


だが僅差だったことが告げられる。


論述でわずかに減点。


完成度は高いが、踏み込みが足りなかったと評される。


クラリスは淡々と受け止める。


(想定通り)


 


「第三位――ノエル」


一瞬、間が空く。


ノエルがゆっくり顔を上げる。


「……はい」


観客席から、小さな笑い。


「安定してるな」 「三位固定か?」


司祭が補足する。


「全体的に平均的、安定した内容でした」


ノエルは目を伏せる。


「……帰っていいですか?」


王太子が一瞬だけ口元を緩める。


「まだだ」


ノエル、沈黙。


 


「第四位――ミレーユ」


ざわめき。


ミレーユが目を丸くする。


「え?ほんとですぅ?」


司祭が言いづらそうに続ける。


「……得点は、零点」


観客席が爆笑と驚きで揺れる。


ミレーユは答案を見つめる。


そこには、美しく並ぶチューリップ。


小さな花畑。


「でも、棄権者がおりますので、順位は四位となります」


観客席から拍手。


「かわいい!」 「芸術点!」


ミレーユは首をかしげる。


「お花、きれいですよぉ?」


 


「最下位――バルバラ(棄権)」


バルバラが立ち上がる。


「問題が悪い!」


観客席がどっと笑う。


「戦場に文字はない!」


エリカが冷たく言う。


「ここは戦場ではありませんわ」


バルバラ、唸る。


 


順位は確定した。


エリカ満点。


クラリス僅差。


ノエル安定三位。


ミレーユ答案に花。


バルバラ答案破壊。


知性という審査は、はっきりと差を浮かび上がらせた。


だが。


王太子は静かに候補者たちを見渡している。


評価は、点数だけではない。


そう告げるように。

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