第十四話:秘められた「後輩メンテナンス」と理性の剥離

 「……よし。リナ、セシル。お前たちはこの『最上級・美肌の湯』付きの別館へ行け。アルベルト、お前はこっちの『精神回復・安眠ハーブ香』の炊かれた地下室だ。いいな? 誰一人、俺の許可なく部屋を出るなよ」


 ​自由都市『ギルマス』に到着した俺、サトウは、詐欺師からせしめた500ゴールドを惜しみなく投入し、メンバーをバラバラの区画に隔離した。


 これには「管理職」としての冷徹な計算があった。リナとセシルは魔力の暴走と物欲を抑えるための隔離。アルベルトは、聖剣抜去のトラウマで発狂されると宿の営業妨害になる。そして何より、スライムの粘液で服が溶け、リナのパツパツなフリフリ服(布面積が絶望的に足りない)を着たマイを、衆目に晒し続けるわけにはいかなかったからだ。


 ​「……先輩、アタシだけ普通の安部屋でいいんスか? 先輩の隣の部屋なんて、なんだか落ち着かないっス……」


 ​マイは、はち切れそうな胸元をリナの服のフリルで必死に隠しながら、廊下で心細げにポニーテールを揺らした。


 ​「ああ。お前は新入りだ。何かあった時に、すぐ俺が指示を出せるように隣にしただけだ。……変な意味はない。いいな? 絶対に、変な意味はないぞ」


 ​自分に言い聞かせ、俺は鍵を開けて自室に入った。……はずだった。


 ​「……失礼するっス、先輩」


 ​ドアが閉まる寸前、シュッと音もなく隙間に潜り込んできた影があった。マイだ。


 ​「……おい、マイ。自分の部屋に行けと言っただろ。これは業務命令だぞ」

 ​「……ダメっス。先輩、アタシ……怖いんス」

 ​「怖い? お前、熊を三頭瞬殺しておいて、何を今さら……」

 ​「……物理的な敵はいいんス。でも、アタシ……さっきのスライムに絡みつかれた時、なんだか頭の中がふわふわして……。先輩に助けられた瞬間の、あの『抜刀』の光が、ずっと脳裏に焼き付いて離れないんスよ。……一人になると、またあのヌルヌルが襲ってくる気がして……」


 ​マイは、リナの短いスカートの裾をぎゅっと握りしめ、上目遣いで俺を見つめた。あの野性味あふれる格闘家の面影はどこへやら、そこにはただの、心細い「一人の後輩」がいた。


 ……俺の「社蓄としての父性本能(あるいはただの逃避)」が、ここで最悪の判断を下した。


 ​「……ふぅ。仕方ない。一時間だけだ。お前の心が落ち着くまで、ここで戦後のカウンセリングをしてやる。……ベッドに座れ」

 ​「……ありがとうございますっス、先輩。……やっぱり、先輩は優しいっスね」


 ​狭いシングルルーム。ランプの灯りはわざと落としたが、それが逆に、マイの褐色の肌の質感を強調してしまった。


 リナの服は、マイの暴力的な肢体を収容するにはあまりに脆弱だった。座った拍子にパチンとボタンが一つ弾け飛び、そこから覗く「褐色の大質量」が、俺の視界を暴力的にジャックする。


 ​「……先輩。……アタシ、恩返しがしたいっス。……言葉じゃなくて、アタシが持ってる一番いい技術で……」


 ​マイは、震える手で俺の肩に触れた。その指先は、戦いの直後とは思えないほど熱く、そして繊細だった。


 ​「……マッサージか? 悪いが、俺の肩は二十年の社蓄生活で……」

 ​「……いえ、違いますっス。……アタシ、師匠に教わったんス。格闘家の本当の強さは、相手を壊すことじゃなく、……一番大切な人を『受け止める』ことにあるって」


 ​マイは、俺の背後に回ると、そっと俺の首筋に顔を寄せた。リナの服の甘い香水と、マイ自身の野性的な蜜の匂いが混ざり合い、密室の空気は一瞬で酸素を失った。


 ​「……先輩。……アタシを、……アタシを鞘にしてほしいっス。……アルベルトさんじゃなくて、アタシの中に、先輩の剣を納めてほしいっス。……それが、アタシの……一生分の恩返しっス……」


 ​マイの声は、もはや後輩のそれではなく、一人の女の、切実な「渇き」を帯びていた。


 俺は振り向こうとしたが、マイの鍛え上げられた腕が、俺の胸元を優しく、しかし確実に拘束した。


 ​「……マイ、お前……。これは、パーティーの規約違反だぞ。……社内恋愛は……」

 ​「……クビになってもいいっス。……アタシ、先輩に『抜かれた』あの瞬間から、もう、先輩以外の人の前じゃ、まっすぐ立てないんスよ……っ!」


 ​マイは、自らリナのフリフリ服を脱ぎ捨てた。

 無理やり着せられていた布切れが床に落ち、月明かりの中に、究極まで研ぎ澄まされた褐色の肢体が現れた。その肌は、俺への情熱でほんのりと赤らみ、ところどころスライムの粘液の名残か、真珠のような汗が光っている。


 ​「……先輩。……アタシ、……しおらしく待つのなんて、苦手っスけど……。……今夜だけは、先輩の好きなようにしてほしいっス。……壊されても、いいっスから……」


 ​俺の理性が、音を立てて砕け散った。

 管理職としての責任? パーティーの規律? 知るか。俺は目の前の、この愛らしくも猛々しい「後輩」を、一人の男として受け止めることを選んだ。

 ​俺はマイをベッドに押し倒した。彼女の脚は、格闘家らしく逞しく、それでいて驚くほど滑らかだった。俺の手が彼女の腰に触れた瞬間、マイは「ひゃぅっ……」と、熊を殺す時とは正反対の、可憐な悲鳴を上げた。


 ​「……先輩、……おっきい、っスね……。……アタシの奥まで、……届くっスか?」

 ​「……黙れ。……これは、特別な『加護メンテナンス』だ。……声を出すなよ」

 ​「……無理っス、……こんなの、……声が出ちゃうっスよ……っ!!」


 ​俺がマイの褐色の太ももを割り、その「秘められた鞘」へと俺自身の聖剣を突き立てた瞬間、彼女は大きく背中を反らせた。


 ​「あ、……ぁぁっ!! 先輩、……入る、入ってくるっス……! おっきい、おっきいっスよ、先輩の聖剣……っ!!」


 ​格闘家ゆえの強靭な筋肉が、俺の剣を全方位から締め上げる。それはアルベルトの尻とは比較にならないほど熱く、貪欲な粘膜が俺の全てを飲み込もうと躍動していた。

 マイは俺の首に必死にしがみつき、その褐色の肌を、さらに深い赤色に染めていく。


 ​「……あ、……あぁぁぁ!! 先輩、……抜いて、……もっと激しく、抜いて、……っ!! 魂が、……魂がっ!!」


 ​俺が腰を引くたびに、マイは逃がすまいと逞しい脚を俺の腰に絡め、その鋭い爪を俺の背中に立てた。彼女の喉から漏れるのは、もはや言葉ではなく、獣のような、しかし甘美な熱狂の産声だった。


 ​「……先輩、……サトウ、さん……っ!! もっと、……もっと奥まで、……アタシを、アタシの全部を、……突き壊して、っ!!」


 ​マイの「鞘」は、突くたびにその熱を増していく。彼女の腹筋が波打つたびに、俺の聖剣はさらなる高みへと導かれた。一突きごとに、彼女のポニーテールが乱れ、枕を激しく打ち付ける音が狭い室内に響き渡る。


 ​「……ダメ、……アタシ、……イっちゃう、……っ!…………!!!」


 ​絶頂の瞬間、マイは俺を砕かんばかりの力で抱きしめ、全身を激しく痙攣させた。彼女の奥底から溢れ出した熱い蜜が、俺の剣をさらに滑らかに、そして淫靡に濡らしていく。


 ​だが、一回では終わらなかった。

 マイの体力は格闘家らしく無限大だ。一度果てても、彼女はすぐに潤んだ瞳で俺を見つめ、熱い吐息を俺の頬に吹きかけてくるのだ。


 ​「……先輩、……おかわり、……お願い、しますっス……。……アタシ、まだ、……全然足りないっス……」


 ​しおらしい態度を見せながらも、その肉体は飢えた獣そのものだった。


 俺は彼女の要求に応え、夜が明けるまで何度も「抜き差し」を繰り返した。

 二回目、三回目と重なるごとに、マイの声はさらに高く、激しくなり、宿屋の壁を揺らすほどの衝撃を伴って響き続けた。


 ​「あぁ、……あぁっ! ……もう、……壊れちゃう、……アタシ、……先輩なしじゃ、……生きていけなくなるっス……っ!!」


 ​俺たちは、汗と蜜にまみれながら、互いの肉体を極限まで貪り合った。

 最後には、マイは俺の腕の中で、ぐったりと力なく横たわり、真っ赤になった顔を俺の胸に隠して、小さく震えていた。


 ​「……先輩。……アタシ、……もう、……一歩も、……歩けないっス……。……明日から、……どうすればいいんスか……?」

 ​「……俺が、……責任を取ってやる。……とりあえず、今は寝ろ」

 ​「……はいっス。……サトウ……先輩。……大好きっス……」


 ​マイは、安らかな寝息を立て始めた。彼女の全身には、俺が夜通し刻み込んだ「愛のメンテナンス」の跡が、あかあかと残されていた。


 ​翌朝。

 ​俺は、一睡もできなかった、文字通り殻になった体を引きずり、なんとかベッドから這い出した。腰の骨がミシミシと悲鳴を上げ、視界は極度の過労でチカチカしている。


 隣では、マイが「……むにゃ。……もう一本…………」と、幸せそうな寝言を言っている。本当に、彼女のスタミナには恐れ入る。


 ​俺は、床に散乱した「元・リナの服」を、罪悪感と共に拾い集めた。……原型を留めていない。これはもう、布切れというよりは、事件現場の遺留品だ。激しい「メンテナンス」の最中、マイの筋力と俺の衝動によって、リナの大切なフリフリ服は無残な細切れに成り果てていた。


 ​「……サトウ!! さっきから扉を叩いてるのに、なんで返事しないのよ!! 私の服を、今すぐ返しなさい!!」


 ​──!?

 (気づかなかった……!)


 廊下から、リナの、全てを察したかのような、怒りと不信感に満ちた声が響いてきた。


 続いて、セシルの「……サトウ様、部屋から、……とても破廉恥な『聖なる香り』が漂っていますわよ?」という、冷ややかな追及が、ドア越しに鋭く突き刺さる。


 ​「………………詰んだ」


 ​俺は、窓から逃げようかと考えたが、ここは三階だ。

 隣の部屋からは、アルベルトの「……サトウ、……俺、なんだか昨夜、マイが『抜いて、抜いて』って叫んでる夢を見たんだ。……俺、もうダメかもしれない。尻の次は、心が壊れそうだ」という、絶望の声が聞こえてくる。


 俺は急いで、アリバイ工作いいわけのためにマイを揺らして起こす。


 ​「……いいか、マイ。起きたら、これは全部『呪いのスライムの残滓を浄化するための儀式』だったと言い張るんだ。いいな? 科学的な裏付けはないが、それっぽい顔をすればリナたちなら誤魔化せるはずだ」

 ​「……ん、……了解、っス。……先輩。……今日も、夜まで頑張るっスよ?」


 ​寝ぼけ眼で、頬を赤らめながら微笑むマイの、あまりにも「しおらしく、かつ欲しがりな」表情を見て、俺は、この異世界での本当の戦いは、魔王軍ではなく、この愛すべき「後輩」との昼夜を問わない肉弾戦にあるのだと、悟らざるを得なかった。


 ​リナがドアを蹴り飛ばして入ってくるまで、あと十秒。

 社蓄サトウの胃壁は、ついに音を立てて崩壊した。

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