神が魔王を討ち果たした世界。
主人公は大柄な男と華奢な男の二人。
この二人、実は魔王を復活させるための旅をしているのだ。
などと述べるとまるで我欲のために平和を乱さんとしている、悪の軍勢の残党のように見えるだろう。
しかしこの二人の印象は、悪という言葉とは程遠い。
豪放磊落な大男ジェラルドと女装が似合う(好んではしない)美麗の氷術師ネモ。性格は正反対に見えるのに仲がよく、二人のやりとりは実に軽妙。
一方で魔王を討ち果たした神を祀る寺院はといえば、その中のいち神官の行いとはいえ、書くのも憚られるおぞましい悪行によって、多くの人々を被害に遭わせていることが、最初のエピソードで語られる。
『神が魔王を討ち果たし、世界は正義に塗り替えられた。』
これは物語のあらすじの一行目だ。
邪悪なる魔王の復活を目論む二人が、星界神イベルダルクによって正義に塗り替えられた世界で暴れまわる。
悪は何で、正義は何か。軽妙なやりとりと愉快なシーン、すっきりした文章によって価値観を揺さぶられる読書体験を、是非してほしい。
(「10テーマ小説コンテスト」骨太ダークファンタジー部門 講評4選/文=稲荷竜)