誰もが知る昔話のはずなのに、読み進めるほど「これは本当に同じ物語だったか」と思わされる。語り口は古風で穏やかなのに、底に沈んだもう一つの筋道がじわりと浮かび上がる構成が巧い。説話で提示された“ずれ”を、久世堂での異聞考が別角度からそっと撫でるように補助し、真相ではなく〈理〉だけが静かに残る余韻が心地よい。昔話を懐かしさではなく“再読の快感”へと変える、品のある連作短編。
「人の世には、小説という形でしか語り得ぬこともある。」まずこの書き出しから心惹かれます。そして浦島太郎、竹取物語、桃太郎…様々な昔話の、独自の展開とその解釈が交互に描かれる独特の構成となっています。短篇集なので、好きな箇所から読み始めても大丈夫。非常にユニークな作品です…!
何かを意味しているこの単語が、どういう意味なのか……楽しみで楽しみで--
昔話の話型の議論からそこに潜む人々の感情の陰が見えてくる。理に落ちず理知的な、怖さの再構成。