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リリスのハサミ

リリスのハサミ

酒部朔日

おすすめレビュー

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★★★
★9
3人が評価しました
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本文ありのおすすめレビュー

  • 山龍遼士郎
    272件の
    レビューを投稿
    ★★★ Excellent!!!

    女たちは、切ることで生き延びる。

    神話のリリスと、現代を生きるひとりの母親。遠く離れた二つの時間が、一丁のハサミによって静かに重なっていく構成が見事でした。
    「切る」という行為が一貫しているのがお見事です。

    神話的な大きさを扱いながら、足場がきちんと生活にある点に惹かれました。
    口紅、写真、制服、肉まん、取れかけたボタン。そうした小さな現実の積み重ねがあるからこそ、リリスの記憶が流れ込む場面も浮かず、むしろ痛いほど自然に読めました。

    復讐や怒りそのものを前面に押し出すのではなく、女が女の絡んだ糸をほどき直す物語として着地している。
    暗さ一色では終わらない読後感です。傷は深いのに、最後には確かに体温が残る。
    神話の引用に溺れず、現代の痛みだけにも閉じず、その両方を往復しながら一つの再生譚に仕立てた、静かで鋭い短編でした。

    • 2026年4月15日 19:39