人は皆死ぬ。遅かれ早かれ、それは変えられない運命だ。
でも「死」はその人の物語の終わりなのだろうか。
『遺響』を読んでいると、そんな問いが浮かんでくる。
ヒロインのセトナが葬送師となり、死者の遺した想いを、生きている誰かへ届けていく物語。
そこにあるのは、派手な奇跡というよりも、もう二度と聞くことのできない声に耳を澄ますような時間だ。
伝えられなかった言葉。
言えなかった後悔。
最後まで消えなかった願い。
セトナが届ける「遺響」は、死者のためだけのものではない。
それを受け取った生者が、もう一度自分の人生を歩き出すための、小さな灯火なのだろう。
そして、その過程を重ねるほどに、セトナ自身もまた、失ったものと向き合い、自分の人生を取り戻していく。
この作品は死者を葬送する物語でありながら、描かれているのはむしろ「その先の未来を生きていく」ということなのかもしれない。
読み終えたあとも、物語が終わったという感覚よりは、誰かの声が遠くでまだ響いているような感覚が残る。
人は死んでも、その想いまでが消えるわけではない。
誰かの心に残ったものは、いつか別の誰かへ受け渡され、静かな「遺響」となって、未来へ続いていく。
そんなことを、そっと思わせてくれる物語だ。
万人におすすめしたい作品です。
進行状況:第一章(1話〜4話、3.5話含む)まで拝読しました。
まず断言したいのは、第4話の決壊シーンがこの作品の核だということです。「優しくした分だけ、失うものが増える。だから、私は、他人を信じるのをやめた」と自分に言い聞かせてきたセトナが、リオン(犬)の想いを代弁して伝える中で、初めて涙を流します。3話までの「私には無理です」「修道院に送ってください」という頑なな拒絶が、ここで一気に決壊する構成は見事でした。3.5話でリオンの純粋な独白を先に読ませてから4話でセトナ側の涙を見せる、という二段構えの感動の作り方も効いています。既存レビューが軒並み高評価しているのも納得です。
一方で、1話・2話にはやや読み進める負荷を感じました。父の横領容疑、婚約破棄、修道院送りの覚悟と、貴族令嬢としての没落過程が丁寧に描かれますが、この段階のセトナはまだ何も選び取っておらず、状況説明が先行してしまっています。3話「ここに来て、まだ一週間しか経っていない」という書き出しは、すでに動き出した人物の言葉として、それだけで強い引きを持っています。1話・2話の情報(特に父の一件は、概要にある国の陰謀に繋がる可能性がある核)は、3話以降のどこかに短い回想として組み込み、冒頭は3話から始める構成の方が、この作品の熱量をより早く読者に届けられるのではないかと思います。
もう一点、セトナのキャラクターについて。1〜3話では拒絶と皮肉が先に立ち、やや素っ気ない印象を受けます。ただこれは4話までまとめて読むと、意図的に閉じた鎧として設計されていることが分かります。1話単位で読む読者にどこまでこの意図が伝わるかは、冒頭の構成を見直すことで改善できる部分だと思います。
死者の想いを届けるという設定と、それに向き合う中で少しずつ心を開いていく主人公の造形、そして「なろう版おくりびと」とでも呼びたくなる丁寧な葬送描写。第二章以降、セトナがどう変化していくか楽しみです。
【レビューコンテスト応募】
かねてから私がスキルモノの作品に抱いていた感情。「与えられたスキルによって人生が決められてしまう」世界観ってある意味世知辛いよな……という感情に真正面から向き合われたようになる物語です。
スキルでなく現実世界であっても人には才能がある。それが自分の望んだものでないことがある。それに対してどう向き合うかが人生の答えであると思わされました。
自らの能力と、数奇な運命によって、他者の死と向き合うことを半ば強制された少女が、次第に心からその死と自らの能力に向き合い、誰かのために、社会のために生きる姿には勇気がもらえます。
やりたくないことを頑張っている人、自分の仕事や能力にプライドが持てず辛い人、自分の才能や才能のなさ自体にやるせなさを感じている人、そんな人に勇気を届けてくれる作品だと思います。
葬送とは、本来とても尊い事柄だと思います。
しかしながら、そういう職業とは、差別を受けてきたような業種でもあると思います。
現実でも、誰しもができる仕事ではありません。
とても尊く、大切な仕事であると認識があっても、気持ちとは別の感情も働いてしまうことがある事柄です。
それを、令嬢はある種強制されてしまう境遇に陥りました。
彼女の拒絶は当然だと私は受け止めます。
ただ、これから彼女は感情を乗り越え、この仕事を尊いと全うしていこうとするようです。
彼女の成長を見届けたい──そんな気持ちになる一作で、最新話まで思わず一気読みしました。
今後を楽しみにしています。
【レビューコンテスト応募】