40代という人生の折り返し地点で異世界へ降り立った主人公。派手な無双よりも、日々の暮らしや人との触れ合いを大切にする丁寧な描写が魅力です。おじさんならではの枯れた視点と、失いかけていた「小さな幸せ」を再発見していく過程に、読む側もじんわりと温かい勇気をもらえる癒やしの一作です。
「優しい王子」という王道のキャラクターを、民衆の「本音の憎悪」と「宰相の魔術」で挟み込む構成が極めて秀逸です。少女のペンダントすら直せない王子の未熟さと、父親が死地へ送られているという大人の残酷な現実。ミコトマスの「君の痛みを教えてくれ」という言葉が、解決手段を持たないがゆえに、かえって民衆の傷を抉ってしまう描写が非常に苦しく、かつドラマチックです。