好きですよ、こういうの。
感情だけで、正義だけで話を進めない。面白くってもう、読むのが止まりません。昨晩(2026/9/3)に、シェアワールドのコンテストでこの作者様をお見かけして、代表作を開いたら。「面白すぎるだろ!」とファンになってしまいました。
本作は、Web小説でよくあるお話にわりと近代的な法体制を適用したらどうなる?というお話。
舞台はいわゆる中世風ヨーロッパな異世界。
物語形式は連作短編で、群像劇に近いのかな、と思っています。
主人公はこの世界における裁判官さん(ヴェルナーさんだけなのかと思ったのですが、他にもいらっしゃるようなので、複数形で)です。
扱う事案は(一部割愛してますが)、
・冒険者パーティーからの追放
・追放された冒険者のざまぁ
・一方的なご令嬢の婚約破棄
・別世界から召喚された聖者
と「おや、よくお見かけするやつですね!」なもの。これらに対し、証拠と証言、そして法律でもって責任の所在を明らかにし、判決をくだしていく。この過程がなかなかしっかりしていて、引き込まれます。
ただバッサバッサ判決を下していくなら、ただのスカッと系です。悪役をよくある異世界ファンタジーの設定に置き換えただけのお話になってしまいます。そうでないのが、本作の魅力です。訴える側にも、訴えられる側にもドラマがある。ちゃんと生きていて、彼らなりの正義がある。それを主人公の裁判官さんたちは時として葛藤しつつも感情ではなく証拠と証言、そして法律で判断していく……とても理性的な作風です。キャラクターもなかなかパンチが効いていて、読んでいて飽きない。出だしから「火力が足りないから追放した」ですからね。「火力w」。
法律のある国は善悪だけで物事は完結しません。どんなに「良かれと思って」やっても、それが罪になることもあります。「良かれと思って」が事故を引き起こしても、「善意でやったから仕方ない」では終わりません。
事案ごとのお話は短めで、頭にすっと入ってくる読みやすい文体。各事案は深く、そして面白い。おすすめです。レビュー者もまだまだ読み途中で続きを楽しみに読み進めている途中ですが、未読の方はぜひ、このコミカルなようで、深い。とても魅力的な作品をお手に取って一読してみてください。刺さる人にはとにかく刺さりますよ!
異世界の当たり前を法廷に引きずり込んで、証拠と証言で解体する話。
勇者が正しい、追放された側が覚醒して無双する、そういうなろう系の前提を、それ、法的にどうなの? と問い直す。その問い直しの手続き自体がエンタメになっている。
同じ法務もの書きとして感心したのは、書類の描写。契約書の厚さ、署名のインクのにじみ、帳簿の数字。紙の上の事実だけで人間の嘘と本音が暴かれていく。感情じゃなく手続きで真実に迫る快感は、本物の法廷劇のもの。
そして判決が出た後、世界が何も変わらない。変わらないどころか、正しい判決が次の災害を生む。この苦さを書ける作品は異世界ものの中にはほぼない。
胃薬を常備した裁判官が、誰にも届かない正しい言葉を言い続ける話。
読め。