異世界の当たり前を法廷に引きずり込んで、証拠と証言で解体する話。
勇者が正しい、追放された側が覚醒して無双する、そういうなろう系の前提を、それ、法的にどうなの? と問い直す。その問い直しの手続き自体がエンタメになっている。
同じ法務もの書きとして感心したのは、書類の描写。契約書の厚さ、署名のインクのにじみ、帳簿の数字。紙の上の事実だけで人間の嘘と本音が暴かれていく。感情じゃなく手続きで真実に迫る快感は、本物の法廷劇のもの。
そして判決が出た後、世界が何も変わらない。変わらないどころか、正しい判決が次の災害を生む。この苦さを書ける作品は異世界ものの中にはほぼない。
胃薬を常備した裁判官が、誰にも届かない正しい言葉を言い続ける話。
読め。