お硬い、地味な作風の小説家。
担当編集からもチクチクと苦言を呈され、彼本人でもなんとなく自覚している。
打開策として編集が提案したのはAI。皆も使っている話題のアイテムだ。
時折デマを出すのが玉に瑕だが、使ってみるとこれほど便利なものはない。
ある日、小説家は機転を利かせる。
それはコロンブスの卵、あるいはパンドラの箱となるアイデアで――
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AIはさながら鏡のようである。使う者の振る舞いがそのまま結果に現れる。
とはいえ鏡はその人をそのまま映すわけではない。なぜならのぞき見る人は、無意識に自分がより美しく(あるいは醜く)見えるようなポーズをとるからだ。
鏡はその人の心の分、補正した状態で反射する。
AIは鏡のようではあるが、鏡そのものではない。
鏡は姿を映し出すに留まるが、AIは補正した姿で対象を「上書き」するからだ。
補正のかかった人物が更にAIを介すると、更に補正がかかる。その人にとって「適した」姿になってゆく。
この作品の主人公もまた、そんな美しさに惹かれて突き進んでゆく。
優しい人工の春は、自分の姿がどんなであったかすらも忘れさせてくれる――