本作品を一言で表現するのは凄く難しいのですが、お仕事×成長×恋愛×別れといった、私たちの日常を取り巻くエッセンスがふわりとした筆致でミックスされ、地獄を舞台にした悲哀の物語として繰り広げられていきます。
登場する鬼たちは、最初は少し恐ろしく感じるものの、読み進めていくと、誰もが我々人間より純粋で、そしてチャーミングな人(鬼)として引き込まれていくこと間違いなしです。
人間-地獄-天国がどのように連環しており、人の魂や罪がその中でどのように輪廻・浄化していくのか考えさせられる一面もありますが、それらは舞台装置のほんの一部であり、重苦しい感じではなく、最後は爽やかな笑顔で読了できる。そんな素敵な作品でした。
地獄が舞台なのに、官舎があり、部署があり、教育があり、システム改修まである。
サラリーマンとしては、それだけでもう楽しいです(笑)
読み進めるほど、この作品は“異界のお仕事もの”としての魅力がしっかり立ち上がっていると感じます。
珠沙の生真面目さと、鬼たちの開けっぴろげな価値観のズレが自然に効いていて、文化の違いそのものが物語の面白さになっています。
夢鬼の勢い、冥鬼の素直さ、優鬼の軽やかさ、鬼玻璃の底知れなさ。
登場人物たちの会話のやり取りも楽しく、地獄という濃い世界観の中でも、読みやすさが損なわれません。
システム部まわりの描写には妙なリアリティがあって、コメントのないソースや古いTODOなど、仕事をしている人なら思わず頷いてしまう場面も多いと思います。
コミカルに読めるのに、異界で働く緊張感や、人を想う気持ちの芯も素敵で、続きが気になる作品です。
おすすめですよ!
獄卒総監である鬼玻璃は、ある日、地獄行きを望む少女を見かける。
本来なら天国に行ける筈なのに、敢えて地獄に行きたいと言うのだ。
いえ。
本当に地獄は、地獄ですよ?
私としてはそうとしか思えない場所なのに、その少女・珠沙は地獄行きを望んだのだ。
それは地獄で罰を受ける為ではなく、山下蓮という恩人に逢いたいから、という理由だった。
果たして、蓮は珠沙の為に何をしたのか?
蓮が、地獄に堕ちた理由とは?
その理由が明らかになった時、私達、読者は何を想うのか?
鬼玻璃に誘われ、珠沙は地獄でSEの職に就く。
今――地獄の検索処理改修を行う為、珠沙はその腕を振るう!(?)