前作で、1000年の孤独を越えてユウキという友と出会った魔人ハキーム。
今度の舞台は、彼が新たな居場所として選んだVRゲームの世界です。
……なのですが、この魔人、とにかく大人しくしていません(笑)
ゲームの「仕様」に疑問を持てば勝手に書き換え、現代の文化を知れば独自の魔法理論として解析し、思いついた“改善”を次々と実行してしまう。
そのたびにユウキが、
「それ、運営に怒られるから!」
と止めることになる二人のやり取りが、とても楽しいです。
しかも、ハキーム本人は至って真面目。
ツンデレすら高度な情報処理として解釈し、世界の仕組みに納得できなければ、自分なりの理屈で正そうとする。
めちゃくちゃ賢いのに、どこか盛大にずれている。
そんなハキームの魅力が、前作以上に存分に発揮されていました。
けれど、笑いながら読み進めていくうちに、この物語にはもう一つの顔が見えてきます。
仮想世界で過ごす時間は、本物ではないのか。
自分自身で経験することには、どんな価値があるのか。
そして、誰かに「そこにいる」と知ってもらえることは、一つの存在にとってどれほど大きなことなのか。
かつて誰にも見つけてもらえないまま、1000年もの時をランプの中で過ごしたハキーム。
最初はユウキ一人だけが知っていた彼の存在が、騒動を起こし、笑いや驚きを生み出すたびに、少しずつ世界へ広がっていく。
その流れには、前作から二人を見てきたからこそ感じられる温かさがありました。
そしてハキーム自身もまた、未来社会で生きる人々の価値観に触れながら、少しずつ世界の見方を広げていきます。
理解できないものに首を傾げ、ときには盛大に暴走しながら(笑)、それでも新しい時代を知ろうとする姿が、とても魅力的です。
魔法と情報工学が入り乱れる、賑やかで自由なVRファンタジー。
けれど、その奥には、1000年誰にも知られなかった存在が、今度は大勢の人に見つけてもらうまでの物語が、しっかりと息づいていました。
前作で結ばれた友情が、今度はどんな世界を広げていくのか。
笑って、驚いて、少し胸を熱くしながら見届けてほしい続編です。