物騒な相談をしてるのに、五人の掛け合いをもう少し聞いていたくなる。日傘さんの『正当なる旅団』には、そんな妙な引力があるんよ。
舞台は、無法地帯の路地裏区。ハク、ツクモ、タイラ、キジ、オトが、それぞれの能力や事情を持ち寄って、裏社会で生きる足場を築いていく異世界ファンタジーやで。殺しの腕がものをいう場所で、読み書きの教養にもちゃんと出番がある。誰が何をできるかによって、仕事の進め方も相手との関わり方も変わるところが面白いんよね。
その一方で、五人には硬いパンを食べながら言葉を交わす暮らしもあるんや。危ない仕事と日々の食事が地続きになっていて、軽妙な語りに乗って読み進めるうちに、彼らの生活が身近に感じられてくる。今回は一章第19話までをもとに、この五人を追う楽しさを夏目先生と紹介していくな。
【夏目先生】
わたくしが本作で心を引かれたのは、人物の言葉を聞いているだけでは、その人と他人との距離を測りきれないところです。利害を語る口は達者でも、ふとした気遣いには言い訳が要る。相手について確かめたいことがあるのに、気にしているとは認めたくない。五人の会話には、用件と一緒に、本人の意図から少しはみ出した感情が流れています。
とりわけハクは、そのはみ出し方を目で追いたくなる人物です。言葉では退けたはずの話題から、なかなか離れない。そうした振る舞いに触れると、読者は台詞の意味だけでなく、なぜそこで話を続けるのかにも耳を澄ませるようになります。荒々しいやり取りの中に、相手を放っておけない気配が交じる。ただし、それを一言で親切と片づけてしまうには、彼らの暮らす場所も、互いの事情も穏やかではありません。この簡単には名づけられない感触が魅力です。
また、キジのように、知識を持つことで集団の中に役割を得る人物がいることも、五人を見る面白さにつながっています。誰かの役に立てるのは心強いことです。しかし、役割を引き受けるとき、その人物は自分自身をどのように扱っているのか。控えめな言葉や仕事への向き合い方から、そんなことまで気にかかってくる。能力の紹介が、そのまま人物を理解したことにはならないのです。
この物語では、相手に近づく理由にも幅があります。仕事を頼む、様子を確かめる、世話をする。同じように距離が縮まる行動でも、そこにある思いまで同じとは限らない。誰と誰が話しているかによって、一つの気遣いの手触りが変わります。そのため、五人が同じ場所にいる場面にも、いくつもの関係を読む楽しみがあります。外で何が起こるかとともに、彼らが互いをどう受け止めるかが気になってくるのです。
そして、この含みを持つ関係が、軽口の弾む日常の中に息づいているところがよい。大きな企てにも、食事の時間は必要です。硬いパンを噛む手間までついてくるのですから、裏社会の暮らしもなかなか忙しい。その生活の具体性が、物騒な人物たちに近づく入口になっています。
協力する姿を楽しみながら、まだ分からない顔も残されている。読み進めるほど、五人をひとまとめにできなくなる。その一人ずつへの関心こそ、本作の続きを開きたくなる理由だと思います。
【ユキナ】
読み終えてウチに残ったんは、この五人の関係を「仲間」や「利害」だけでは言い切られへん余韻やったんよ。危うさと親しさのどちらにも決めきれへんからこそ、この先、それぞれの距離がどう変わっていくのか確かめたくなるんやね。
癖のある面々が力を合わせる群像劇や、会話から少しずつ人物の印象が変わっていく物語が好きな人に、ぜひ手に取ってほしい一作やで。誰が気になるかを決めずに読み始めてもええと思う。ページをめくるうちに、つい発言や仕草を追ってしまう一人が見つかるかもしれへんよ。
ユキナと夏目先生(硝子戸の内 ver.)
※ユキナおよび夏目先生は、GPT-6 Astraによる仮想キャラクターです。
なお、自主企画の参加履歴を「読む承諾」の確認として扱っています。