殿下を崇め、盗み見て、心の中で大騒ぎする腐った侍女メアリーの語りがとにかく楽しい作品です。
表向きは慎ましい侍女、内心は妄想とツッコミで大渋滞。
そのギャップだけで最初から笑わせてくれます。
出来すぎ侍従ヒューバートとのやり取りもよく、メアリーの暴走を淡々と止める構図がいいテンポを生んでいます。
殿下の美しさへの崇拝、職務中の必死な自制、そして何かと注意してくる上司への内心の悪態が、毎話の読み味を作っています。
宮廷ものの上品さと、腐った妄想コメディの勢いが混ざった軽快な一作。
美形王子、侍従、侍女の距離感をニヤニヤ眺めたい読者におすすめです。
王太子アランに仕える侍女メアリー。彼女はアランを愛していた。男としてでなく、推しとして……。自らを腐っていると表す彼女は心を込めて王太子の世話に励む。有能な侍従に度々邪魔をされようと、飽きず、懲りず、諦めず、彼のすばらしさを直向きに愛で続け、心を滾らせる、いや腐らせ続けるのだ。
物語はメアリーこと“私”さんの独白で構成されているのですが、綴られるものは彼女がいかにアラン様を崇め奉っているか、本当にもう「それ!」なのですよ。え、こんなささいなことでそんなにときめく!? それもギャップ萌えにすり替えちゃう!? っていうか気持ち悪いんですけど!
そう、取り澄ました侍女しぐさの裏で気持ち悪いメアリーさんの思考が垂れ流されるばかりなのに、彼女が見せつけ、魅せつける、けして揺らぐことのない一途さがなんとも美しくて……気がつけばわたくし嵌まってしまっておりました。
とはいえ本作は恋愛もの。そして推し心と恋心はまさに紙一重です。その紙一枚の差が最後にどうなるものかは、本編にてご確認くださいね。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=髙橋剛)