水筒
人がいない場所は小走りで移動してダンジョンに戻って来た。鞄を元の位置に戻してからひと息つくために中から水筒を取り出して水を飲んだ。一番安くてかさばらない竹筒製の。
立ち上がってプリムスを探しに行く。出る前にいたところから見える範囲には居なかった。窪みに埋もれているか、反対側にいるのか。
「スキア、プリムスの居る場所分かる?」
「みゃっ!」
私の影からするりと出ると小さな山がいくつかある場所へ向かって歩いて行った。止まった場所を見渡すとこの前のように何かを包んだまま動いていた。
「プリムス、見つけてくれたのね」
プリムスごと持ち上げると動きが一瞬だけ止まって“そうだよ”と気持ちが伝わって来た。すぐ近くの開けた場所に置いて、「終わったら教えてね」と告げて、やりかけだった場所へ戻って続きを調べ始めた。
プリムスに向かって前日に作られた小さな山を崩してはチェックするというのを繰り返して、しばらくするとスキアに突かれた。プリムスの掃除が終わったんだと気付いたので一緒に向かう。
プリムスが誇らしげに伸び上がっているのを「ご苦労さま」と労ってきれいになった物を手に取って、何を見つけたのかを確認した。
動物か魔獣などの生き物の皮か頬袋などを使った水筒のように見えた。ダンジョンゴミに多くある物の1つだけど、壊れていない物が見つかったとしても魔物や魔獣の血や何か分からない汚れがひどくて、専門家が洗ってもきれいに取れないこともあるし、きれいに出来たとしてもそれに見合うだけの高級素材や高機能なものでなければ、洗浄費用よりも新品を買った方が安い。私もいくつか洗ってみて駄目だったのでずっと廃棄対象にしていた物の1つだった。
「プリムスはすごいね。こんなにきれいに出来るなら、これから売れる物が増えるよ」
ぽよょん
「2人は壊れていない物を見つけるのが得意なのね。頼もしいわ」
2人から嬉しそうな気持ちが伝わって来る。持ち帰り用の場所へ置いた後に、声をかけるまで壊れていない物だけを2人で協力して探してねとお願いした。私はやりかけの場所に戻ってその山のチェックを終わらせると、今日最後の廃棄するゴミを少しと、持ち帰るくず金属を半分くらい詰め込んだ。
「スキアどこにいるの?」
「みゃっ」
声が聞こえたのはちょうど私からスキアの姿が見えない大きなゴミの向こう側だった。足元を気をつけながら声のした方に歩く。
スキアの足元にはプリムスが黒い塊を吐き出していた。
「他にもありそうと思ったなら2人で探してね。これを向こうに持って行ったら私も一緒に探すから」
「みゃっ」
ぷるん
持ち帰りの山の横にそれを置いてから2人を観察してみると、プリムスとスキアは私より互いに意思疎通が出来ているらしい。プリムスがぴょんぴょんと激しく同じ場所で跳ねるとスキアが山を崩し、プリムスが探すのを再開するということを繰り返している。
私とスキアでプリムスを手伝い、その後2つほど黒い塊を回収したところでゴミ拾いは終了。
残りのスペースにプリムスが見つけてくれた物以外にちょうど良い量を選んで詰めていく。出口のチェックの後にゴミ捨て場に向かう。ゴミ捨て場の前で自分の鞄に持ち帰り分を詰め込み、廃棄するゴミを仕分けして捨て、ギルドにバックを返却したら仕事は終了。丸1日でも半日でも依頼料は同じ。
今回のゴミの山はどれだけの収入になるか楽しみ。いつもは廃棄しか選択出来なかった物がいくつか見つかったから。今日のその分の収入はゴミ拾いの仕事がない時の2人の食事代に回そうと心に決めて家路を急いだ。
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