タグにガールズラブとある。普段はそういうジャンルの作品は読まないのだが、ちょっと事情があって読んだ。読んでみて、たいへんおもしろかった。先が気になって、はてさてどうなるのやらと思った。
ヒロイン(?)の黒森さんは、そういう描写が一切ないのに、どこか猫を思わせて、キャラクターが立っていたように思う。筆者の描写の妙である。
この作品は『歯車』というお題に基づいて書かれた物語だが、その点で、うまくお題を消化しているのも高く評価したい。私も同じお題で短編を書いたが形だけの作品になってしまったので、本作を読んで勉強になった。ありがとうございました。
いろいろ書いたが、とにかく単純に物語としておもしろいので、ガールズラブに縁遠い人も一度チャレンジしてみてはどうだろうか。文章がうまいので、むりなく読めると思う。
歯車の持つ意味として一番に思い浮かぶのは噛み合わせですが、もうひとつの重要なイメージ(として私が思い浮かべるもの)は、不変です。機械式時計に使われる歯車は、その物理的な意味や役割において特にこのイメージが強いです。そこが二人の性格や関係性を通して、これでもかと伝わってくるのがずるいです(最高です)。同性愛を描きながらも、その愛情が互いへの敬意という普遍的な人間性に根差しているところも好きです。あとは圧倒的に読みやすいですね。ライト文芸のお手本みたいな疾走感があって、だけど焦らずもたつかず一定のペースで(本当に時計みたいに!)進んでいくので、読んでいてとても心地好かったです。
いろいろ書きましたが、結局のところ、此処には私が百合小説に求める全部がつまってましたありがとうございます。に尽きます。
時計修理技能士の「私」の前に現れたのは、25歳にして並外れた技術を持つ黒森雫。
彼女は技能五輪の動画を観て「私」の手の動きに惚れこみ、「私」の勤める会社の面接を受けに来たのだという。
「私」もまた彼女の技術に魅了され、さらには彼女自身にも魅了されていくが、思いがけぬ不運に見舞われ――。
時計修理という特殊な世界で繰り広げられる、繊細にして濃厚な百合模様。
無愛想だけれど「私」を心の底から慕っている黒森さんがカッコよくて可愛らしくて、二人の時計への愛と熱量、お互いへの想いや尊敬も胸に刻まれます。
外ではもっぱらスマホで、家では電波時計やパソコンで時間を確認している私も、機械式時計が欲しくなってしまいました。
「歯車」という言葉と、時計というモチーフのイメージが、最大限に活かされた名作です!