第37話
暗闇のリビングに、いつものように椅子に腰を下ろしているスケルトンさん。見慣れた光景のはずだが、今夜ばかりは改めてその「正体」に恐ろしさを感じるかも。
「おかえりなさい、リョージさん」
「ただいま、スケルトンさん。……少し話したいんだけど、いいかな?」
「何でしょう。……って事もないですね、傭兵のことでしょう? 話してみなさい」
「それもだけど、ギルドの事も聞いて欲しくて」
「ふむ」
俺は、自分の心に溜まったものを吐き出した。
あの傭兵が貴族の回し者である可能性、商業ギルドがその貴族と通じて権利書を狙っていること。そして、冒険者ギルドが後手に回り、俺自身が彼らへの不信感を募らせていること。
「リョージさんは、どうされたいのです?」
俺がどうしたい?そんなのは……。
「……正直、分からない。傭兵は気味が悪いし、どこの誰とも知れない貴族には腹が立つ。商業ギルドには黙ってほしいし、冒険者ギルドは『手出しするな』と言うなら、しっかり責任を持ってほしいんだ」
違う。そんな泣き言を言いたいわけじゃない。俺は、ただ――。
「リョージさん。……私は、構いませんよ」
「――ッ!?」
心臓が跳ね上がった。
「スケルトンさんに頼めばすべて解決する」という俺の甘い誘惑を見透かされたかと思った。
そしてその瞬間、目の前の彼から初めて明確な『魔圧』と言う物を感じてる。以前話を聞いた様に全身から紫のモヤが立ち上り、眼窩の奥には青白い光が灯る。そこに居るのはいつもの「スケルトンさん」ではなく、アーバン・ロクステッド子爵の亡霊そのものだった。
「……ごめん。スケルトンさん、大丈夫だ。落ち着いたよ、ありがとう」
俺が感謝を述べると魔圧は抑えられいつものスケルトンさんに戻っていた。
「よろしいのですか?」
「多分、混乱してたんだと思う」
考え直して見る自分の第1優先は何なのか。そんなのは分かりきってる。孤児院に被害が及ばないこと。そして、これ以上面倒に巻き込まれないことだ。ならどうする?。
また、混乱しそうだけどやる事はこの屋敷を守って貰うスケルトン自身に、その上で俺は再び傭兵が来たら迷わずに返り討ちにする。
「リョージさん、そんなに気負う事は有りませんよ、本当に私はどちらでも良いんです、私自身もここを失うのは惜しいですから」
「スケルトンさん……もちろん手伝ってもらうよ。なんせここは、あんたの場所でもあるんだから」
後は孤児院だけど、あっちは男爵が何とかしてくれるはず、信じるしか無い。
「ギルドか、正直ギルドに不信感が出てきちゃったし、ヴォルフさんも頑張ってると思うけどどうしたらいいかな?」
「リョージさんは、やはり優しい方ですね。ギルドは仕事をすれば良いだけの機関です、無理に信じる必要はない、むしろ、ギルド側が貴方を信じて頼ってくるように仕向けなさい」
その言葉に、胸のつかえが取れた気がした。
俺はギルドを「守ってくれる組織」だと勘違いしていたのだ。彼らにとって俺の安否は二の次、ならどうする俺は?。
あの傭兵がまた来た時に備える、これは……
「スケルトンさん、もう一つ。あの傭兵……今の俺には無理だ。だから、代わりに戦って下さい」
「分かりました、私の魔圧を耐えて逃げた御方ですからね。少し私にもプライドがありますから、次はキッチリ仕留めましょう」
カタカタと笑っているが、今日のスケルトンさんはやっぱり少し怖く感じるなぜ?。
・・・あ!
「スケルトンさんさぁ、この場所って何か特別な場所だったりしますか?権利書だって前みたいに偽装すれば良いのに、今回は正式なのを盗りに来たし、こうも狙われるなんて何かあるのかなと」
「それは相手に聞くしかありませんね。当時の権利書には契約魔法が施されていますから、不正はすぐ露見しますしね」
そうか、その辺もその内、分かれば良いか、何か落ち着いたな、スケルトンさんはカップの縁を人差し指(骨)でなぞりながら外を眺めてる。
「スケルトンさん、話を聞いてくれてありがとう、とりあえずスッキリしたし、今日の所は休むよ」
「分かりました。一日、お疲れ様でした」
こちらを振り向くことなく告げたその言葉に、どこか他人事のような、あるいは深い思惑が潜んでいるような奇妙な感覚を覚えながらも、俺は重い体を休めるために自室へと戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます