人の痛みを当てるという行為が、作中でふたつの全く異なる意味を持って機能している点がこの作品の特徴だ。
ジンにとっては目的ではなく結果であり、アリアにとっては技術として研究の対象になる。同じ能力を見つめるふたりの眼差しの非対称が全篇にわたって緊張を生んでいる。
ジンが人の核心に触れる場面は毎回違う切り口で設計されていて、読む者がまた同じ手法だと感じる前に次の変奏が来る。
商人の荒れた手、柱の背丈の傷、男の火傷の跡、老女の軍服の花。観察される物が毎回語り手として機能し、ジンは説明するのではなくそれを指差すだけでいい構造になっている。