教室で少しずつ距離を縮めていく二人。それを見守る穏やかな物語かと思った瞬間、背後から忍び寄る異質な気配に、空気が一変します。
「冷たい」ではなく「温度が欠けている」という表現が秀逸で、目に見えない存在の不気味さがじわじわと伝わってきました。
けれど、この作品の怖さは、単なる怪異では終わりません。
後ろの席にいる「僕」は、ただ相手を見つめ、近づきたいと願っているだけ。その想いは恋に似ているのに、決して届かず、相手にとっては恐怖でしかない。
温かく育っていく恋と、永遠に動き出せない恋。その対比が、物語に切なさと深い余韻を残しています。
卒業しても、季節が変わっても、あの席にはまだ誰かがいる。
怖いのに悲しい。読み終えたあと、思わず自分の後ろを振り返りたくなる短編です。