第2話 モテたい人がいるならば
「おーいって、マジで」
スーパーの入り口にたむろしていた中学生男子数人がちょっとだるそうに話していた。
何を話していたのかは分からないが、私も本当は君たちと意気投合できるくらいのガキンチョ魂なのだよ、と思いながら横を通る。きっと彼らは春休み真っ只中なのだろう。
私の今住んでいるところは、桜も梅もまだ本気を見せていないし、やる気も出していないですが、皆様のところはいかがですか?
この桜たちが咲くころ、スーパーにたむろしていた彼らはクラス替えの張り紙に翻弄されるでしょう。また違うところでは、偉い人の話を表面上は聞いているふりをして、頭では学生時代に戻りたい心を必死にスーツでごまかしている人もいて、悔しい気持ちを持ちながら何か覚悟を決めた人もいて、憧れのランドセルを背負っていく我が子を見て応援と心配の気持ちで忙しない人もいたり。
世の新陣代謝がぐっと早くなる4月がやってきます。
そう。私の脳内が何故か
「いとーしーさとせつなーさを兼ね備えてる、男子!」
に侵される4月。ちがう、そんなのはどうでもいいんだ。出会いの時期、4月です。
新しい環境で1発かましたい方々の気持ちは、すみませんが正直分からない。私、陰キャなので。
そんな内向性99%という記録を叩き出した私は美容室がとっても苦手で、前住んでいたところでは、近所のこじんまりとした床屋に一時期通っていました。
最初お店に入った時、店主のおばさまからどこかの営業と勘違いされて追い払われようとしたのも、今となってはいい思い出です。
何度も某有名映画の有名セリフである
「ここで働かせください!」
と同じくらいの熱量で
「ただ髪を切りたいんです!」
と何度もお願いしてようやくカットしてもらえる安心と、店主のおばさまも私が営業マンではないことに安心してか、椅子に座るや否や世間話が始まりました。
「えらい若いわねー。うちのお客さんでは来ないような人だからびっくりしちゃって。ごめんね」
「いえ…」
「大学生?」
「いえ、この4月から社会人になりました」
「あら!そうなのぉ!おうちここらへん?」
「あ、すぐそこで」
「そうなのねぇ。ご実家もそこなの?」
「いや実家は…」
私の実家は、九州。当時住んでいたのは関西だった。
「え!」
私の地元を聞いたおばさまは手を止めた。
「え?」
私はシンプルにその大きな声に驚いた。
「方言かわいいところじゃん」
「そうですか?」
「あっちではどんな感じで喋るの?聞きたい聞きたい」
「えーと。髪切りに行くけん、とか?」
「えー。かわいい~。それ、職場で使ったらイチコロだよ」
「そうですか?」
その日は思った以上にこけしヘッドにされて、小学生時代の自分を思い出した。
それから月日が流れ、高校から付き合いのある友人と遊ぶ機会が増えた。その友人は彼氏を作ろうと日々努めており、合うたびに基準が変わっていた。
ただ一つ、「関西で生まれ育った人」という条件だけは最初から揺るがなかった。
「なんでそこまでこの地域の人にこだわるの?」
アプリで会った人がいまいちそうだった友人にとある日聞いてみた。
「理由は何個かあるけど、1番はやっぱ方言かな」
「ふーん」
思ったよりもシンプルな理由なんだ…
そう他人事極まりなしだった。
数か月後、友人の”彼氏に譲れない条件”を適当に聞き流していた人間はまんまとその方言マジックにかかるのであった。
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