18

家に着くと、キャロルとお風呂に入って、ご飯を食べさせて寝かしつけた。


恐ろしさにバクバクと鳴っていた心臓が、ようやく落ち着いた。


私はブレスレットに向かって話しかけた。


「ラウル、どうしていきなり現れたの?魔法を使ったの?」


もちろん反応はなかった。


皇宮へ手紙を書くわけにもいかないし、明日キャロルを連れてジュース売り場へ行こうか。


大衆食堂に4歳の子を連れて行くのは気が引けるし。


行ったところで会えるかどうかはわからないけど。



「はぁ、会いたい」


アリスには引っ越すと言ってしまったし、平民が男爵邸へアポ無しで突撃するのは失礼に値するから、また手紙を書いて後日会いにきてもらおうと思う。


今日の出来事が恐ろしくて眠れそうにもない。


寝ている間に公爵の″使いの者″が現れたらどうしよう。


私だけ殺されて、キャロルが攫われるかもしれない。


「絶対……絶対、私が守るんだから!」



″転生や憑依ではない″と言われたり、今日は″殺されたことを思い出した″り、何が何だか分からない。


一気に情報が頭の中に入ってキャパオーバーになって溢れちゃったのかな。



ラウルに全て話して、ラウル自身の秘密も教えてもらおうか。


″友達ごっこ″から″本当の友達″になったばかりだけど,更に仲良くなれるきっかけになるかもしれない。



今は不安な気持ちばかり渦巻いてしまって冷静な判断が出来ないだけなのかもしれないけど、ラウルに会いたい。



「会おう。明日、会いに行こう!」



そう決意した瞬間、誰かが我が家のドアをノックする音が聞こえた。



まさか、殺しにきた?



私は寝ているキャロルを抱きあげた。



「んっ……ママぁー……?」


「キャロル起こしてごめん、声出さないで。」


「……えー?」


「しっ!」


トントン、と叩く音が大きくなり、回数も増えた。



「ママぁ、震えてるよ?キャロルが、出て行って倒してあげようか?」


「え!?何言ってるの?」


まだ4歳だから何もわかっていないのか、キャロルが物騒なことを口にした。



「ママのこと、キャロルが守ってあげるから大丈夫だよぉ」


「静かにって!ママがどうにかするから大丈夫!ありがとう!」



娘に心配してもらうなんて情けない。


私はガクガクと震える足で、キャロルを抱きかかえたままキッチンへ向かった。


その間もノックの音は鳴り止まない。


ヤるしかない……。



魔法も使えない、剣術も使えない私だけど、ヤられるくらいなら、ヤってやる。



この子以上に大事なものなんてないんだから、殺人者になってでも守ってみせる。



深呼吸を繰り返したあと、私は震える手で果物ナイフを持ち上げて、刃を覆っているカバーを外そうとした。


左手でキャロルを抱っこしたまま、右手のみで外そうとしたからか、スライドさせるときに誤って自分の指を切ってしまった。



「いっ……」


すると、また左腕に熱を感じた。


そしてあの時と同じように目の前がパァッと光り輝いた。


「今日は友人から何度も頼られる日らしい。」


すごく嬉しそうに微笑んだラウルが目の前に現れた。

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