伝承でしかなかった物事が、ただの娘の身に起こったとき、彼らの小さな世界にどのような波紋が広がっていくのか……一人ひとりの人となりも、なぜそんな行動をするかも、すべては静かに語られます。彼らは確かにこの物語の中で悩みながら生きているのだと思います。
静かな崖上の集落で暮らす一人の少女。青く変わった森、語り継がれる古い口伝、そして人々が決して触れようとしない“何か”。この物語は、派手な展開よりもまず「世界の空気」をじわじわと感じさせてくる作品です。穏やかな日常の裏側に、少しずつ不穏な気配が滲んでいく構成がとても印象的でした。伝承として語られていた出来事が、もし現実に起き始めたら――。静かな導入の中に大きな物語の予感が漂う、続きが気になる作品です。