第9章
名前誕生編 ――真名覚醒
王都の空。
黒い雲が渦巻く。
街の上空に浮かぶ魔族の女。
魔王軍四天王――破壊のリゼル。
彼女の魔力はアルゼルとは違う。
重い。
そして純粋な破壊の気配。
地面が軋む。
建物の窓が割れる。
リゼルがゆっくり降りてくる。
「なるほど」
主人公を見る。
「確かに妙だ」
主人公は剣を肩に乗せる。
「何が?」
リゼルは目を細める。
「名前がない」
一拍。
「それだけで」
「?」
「ここまで強い」
主人公は笑う。
「褒めてます?」
リゼルが言う。
「いいや」
一歩。
「確認しているだけだ」
魔力が膨れ上がる。
黒い雷。
空気が震える。
「お前が」
一拍。
「世界の管理者候補か」
主人公は答える。
「らしいです」
リゼルが笑う。
「なら」
一拍。
「壊してみよう」
拳を握る。
「世界ごと」
瞬間。
リゼルが消えた。
次の瞬間。
主人公の目の前。
拳。
衝撃。
ドォォン!!
地面が爆発する。
主人公は横に跳ぶ。
死線支配。
未来が見える。
だが。
それでも速い。
リゼルの拳。
連撃。
空気が裂ける。
主人公は剣で受ける。
ガキン!
衝撃。
吹き飛ぶ。
瓦礫に激突。
「ぐっ…!」
リゼルが言う。
「四天王の中でも」
一拍。
「私は」
拳を鳴らす。
「純粋な破壊力なら一番だ」
主人公は立ち上がる。
体が震える。
でも。
どこか冷静だった。
スキルが動く。
【死線支配】
【未来分岐観測】
【勝率:4%】
主人公が呟く。
「上がった」
リゼルが笑う。
「まだ余裕か」
再び突進。
主人公は剣を構える。
だが。
その瞬間。
視界に文字が浮かんだ。
【名前未定義】
【存在領域不安定】
【真名生成開始】
主人公が止まる。
「……え」
世界が揺れる。
リゼルの拳が迫る。
だが。
主人公の中で。
何かが開いた。
声が聞こえる。
遠い声。
古い声。
神のような声。
『世界を管理する者よ』
主人公が目を見開く。
「誰だ」
声が続く。
『お前はまだ未完成』
『だから名前を持たない』
リゼルの拳が当たる。
ドォン!
主人公は吹き飛ぶ。
だが。
意識は別の場所にあった。
白い空間。
無限の光。
主人公は立っていた。
「ここは」
声が答える。
『世界の根源』
『名前が生まれる場所』
主人公が聞く。
「俺の名前?」
声が言う。
『名前とは』
一拍。
『存在の定義』
『そして』
一拍。
『世界に影響を与える権限』
主人公は少し笑った。
「やっぱり」
一拍。
「スケールでかい」
声が言う。
『お前には』
『候補がある』
空間に文字が浮かぶ。
無数の名前。
英雄。
王。
神。
主人公は首を振る。
「違う」
文字が消える。
主人公が言う。
「俺は」
一拍。
「ただの冒険者だ」
その瞬間。
光が震えた。
新しい文字が浮かぶ。
古い言葉。
神話の言語。
主人公は読めない。
だが。
意味は理解できた。
その名前は。
世界を巡る者
死線を越える者
そして。
小さく。
本当に小さく。
別の古い文字が紛れていた。
主人公はそれを見る。
「……?」
意味はわからない。
だが。
どこか懐かしい。
その文字。
古代語で。
こう読めた。
マムルーク
主人公は呟く。
「変な名前だな」
声が言う。
『それは』
一拍。
『遠い世界の記録』
『記憶の断片』
主人公は肩をすくめる。
「まあいい」
一拍。
「今決める」
光が集まる。
名前が形になる。
主人公は言った。
「俺の名前は」
一拍。
「レイ」
光が爆発した。
【真名生成】
【レイ】
【世界管理権限:部分解放】
【死線支配 → 運命支配】
現実。
王都。
瓦礫の中。
主人公の体が光る。
リゼルが目を見開く。
「……何」
主人公――レイが立ち上がる。
体から光が溢れる。
空気が変わる。
世界の法則が震える。
リゼルが呟く。
「真名覚醒…」
レイが剣を構える。
「待たせました」
一歩。
歩く。
地面が静かに光る。
リゼルが拳を握る。
「いい」
一拍。
「それだ」
魔力爆発。
四天王の全力。
リゼルが突進する。
レイは静かに言う。
「見える」
未来。
運命。
全て。
そして。
剣を振る。
光。
運命の斬撃。
ザンッ!!
リゼルの体が止まる。
沈黙。
四天王が笑った。
「なるほど」
一拍。
「やっと完成か」
体が崩れる。
消える。
最後に言った。
「楽しみだ」
一拍。
「魔王が」
霧になる。
四天王リゼル。
消滅。
静寂。
王都の空。
嵐が消える。
リディアが呆然と立っていた。
「レイ…」
主人公が振り向く。
「はい」
少し笑う。
「名前」
一拍。
「できました」
その瞬間。
遠い魔界。
魔王城。
玉座の男が立ち上がった。
「ついに」
一拍。
「名前を得たか」
魔王が笑う。
「来い」
一拍。
「レイ」
そして。
世界最大の戦いが始まろうとしていた。
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