第7章
四天王アルゼル戦決着編
――名前を持たない英雄
王都の夜。
街は半壊していた。
砕けた石畳。
崩れた建物。
遠くで鳴り続ける警鐘。
その中心で。
主人公と魔王軍四天王――死神アルゼルが対峙していた。
黒い魔力の嵐。
アルゼルは笑う。
「素晴らしい」
巨大な鎌を肩に担ぐ。
「人間がここまで来るとは思わなかった」
主人公は剣を握る。
体中が痛い。
血も流れている。
だが。
視界だけは異常に澄んでいた。
覚醒したスキル。
死線支配。
無数の未来が見えている。
その中で。
生き残る道は――一本。
アルゼルが言う。
「だが」
一拍。
「ここで終わりだ」
黒い魔力が膨れ上がる。
空が裂ける。
王都の結界が悲鳴を上げた。
リディアが叫ぶ。
「まずい…!」
アルゼルの背後。
巨大な影。
死神のような黒い翼が広がる。
「第三形態」
地面が震えた。
主人公は思う。
やばい。
本気だ。
アルゼルが笑う。
「俺は」
一歩。
「魔王軍四天王」
「死神アルゼル」
一拍。
「戦争そのものだ」
瞬間。
アルゼルが消えた。
次の瞬間。
主人公の目の前。
鎌。
振り下ろされる。
ドォォォン!!
爆発。
地面が吹き飛ぶ。
主人公はギリギリで回避。
死線支配。
未来を読む。
だが。
速すぎる。
アルゼルの連撃。
鎌。
蹴り。
爪。
衝撃。
主人公は吹き飛ぶ。
瓦礫に激突。
「ぐっ…!」
アルゼルが近づく。
「限界だな」
鎌を構える。
「終わりだ」
その時。
声が響いた。
「待って」
リディアだった。
アルゼルが振り向く。
「何だ」
リディアは主人公を見る。
そして。
言った。
「あなた」
一拍。
「まだ名前を言ってない」
主人公が呟く。
「そういえば」
アルゼルが笑う。
「確かに」
一拍。
「お前の名前」
「聞いていないな」
主人公は考える。
確かに。
言ってない。
リディアが言う。
「どうして?」
主人公は少し困った顔をした。
「それ」
一拍。
「俺もわからないんです」
沈黙。
アルゼルが眉をひそめる。
「何?」
主人公が言う。
「俺」
一拍。
「名前思い出せないんですよ」
空気が止まる。
リディアが言う。
「……え?」
主人公は言う。
「最初から」
「?」
「記憶はあるんです」
「?」
「でも」
一拍。
「自分の名前だけ思い出せない」
アルゼルの目が細くなる。
「……なるほど」
主人公が言う。
「だから」
「?」
「冒険者登録のときも」
回想。
ギルド。
受付。
リディア。
「名前を」
言われた。
でも。
言えなかった。
だから。
適当に書いた。
名無し。
リディアが震える声で言う。
「まさか」
宮廷魔術師の言葉が蘇る。
神の後継者。
システム管理者。
アルゼルが笑った。
「そういうことか」
主人公を見る。
「お前」
一拍。
「人間じゃないな」
リディアが叫ぶ。
「違う!」
アルゼルが言う。
「違わない」
鎌を構える。
「理解した」
一拍。
「神は」
「?」
「名前を与えなかった」
主人公が聞く。
「どういう意味?」
アルゼルが言う。
「神の後継者」
一拍。
「世界を書き換える存在」
鎌を指す。
「そんなものに」
一拍。
「固定された名前は不要」
リディアが呟く。
「まさか…」
アルゼルが言う。
「名前とは」
一拍。
「存在を縛るものだ」
主人公を見る。
「だが」
一拍。
「お前は」
「?」
「世界そのものになる存在」
沈黙。
主人公が苦笑する。
「スケール大きいな」
アルゼルが構える。
「だから」
一拍。
「ここで殺す」
魔力が爆発する。
巨大な黒い刃。
死神の斬撃。
「終わりだ」
世界を割る一撃。
その瞬間。
主人公の中で。
何かが開いた。
【死線支配】
【最終覚醒条件達成】
【名前未定義】
【存在領域拡張】
主人公の目が光る。
世界が静止する。
アルゼルの斬撃。
止まる。
主人公が呟く。
「なるほど」
一歩。
歩く。
静止した世界の中。
アルゼルの前に立つ。
「名前がない理由」
一拍。
「わかった」
剣を構える。
「俺は」
一拍。
「まだ完成してない」
時間が動く。
アルゼルの斬撃。
主人公が避ける。
そして。
剣。
光。
超高速の斬撃。
ザンッ!!
アルゼルの胸が裂ける。
四天王の目が開く。
「……何」
主人公が言う。
「これが」
一拍。
「俺の能力」
死線支配。
未来の全ルート。
戦闘計算。
最適行動。
その全て。
現実に実行する能力。
主人公が走る。
アルゼルへ。
連撃。
斬撃。
衝撃。
爆発。
アルゼルが吹き飛ぶ。
地面を滑る。
四天王が笑う。
「素晴らしい」
血を吐く。
「本物だ」
立ち上がる。
だが。
もう限界。
アルゼルは鎌を落とす。
主人公が剣を向ける。
沈黙。
アルゼルが言う。
「聞かせろ」
一拍。
「未来の神」
「?」
「お前の名前」
主人公は考える。
少し笑う。
「まだない」
一拍。
「だから」
剣を構える。
「今は」
言った。
「ただの冒険者です」
斬撃。
光。
ザンッ!!
アルゼルの体が崩れる。
魔力が霧になる。
四天王は最後に笑った。
「いい」
一拍。
「その方が」
消える。
「面白い世界になる」
死神アルゼル。
消滅。
沈黙。
王都の空。
嵐が消える。
人々が呟く。
「勝った…?」
リディアが走る。
主人公に。
「生きてる!?」
主人公が笑う。
「ギリギリ」
空を見上げる。
星。
静かな夜。
だが。
遠く。
魔界。
魔王城。
玉座の男が笑った。
「面白い」
一拍。
「ついに出たか」
魔王が言う。
「神の後継者」
そして。
物語は次の段階へ進む。
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