第13章

一番面白い覚醒


 主人公の視界に。


 文字が浮かんだ。


 それは初めて見る表示。


 スキル画面。


【固有スキル覚醒】


 主人公が呟く。


「なんだこれ」


 文字が続く。


【死線蓄積】


【これまで経験した死線を戦闘演算に変換】


【死にかけた回数:97】


 主人公が言う。


「多いな」


 リディアが叫ぶ。


「今何が起きています!?」


「わかりません!」


 スキル説明が続く。


【死線経験を元に未来予測を生成】


【危険行動に対する回避率補正】


【戦闘経験値自動演算】


 主人公が呟く。


「つまり」


 次の瞬間。


 ドラゴンの攻撃が来る。


 でも。


 もうわかる。


 未来が。


 ほんの少しだけ。


 見える。


 主人公が言う。


「なるほど」


 地面を蹴る。


 突進。


 ドラゴンの牙を避ける。


 首の下へ。


 剣。


 ザン!


 血が飛ぶ。


 観客席が総立ち。


「嘘だろ!」


「災害級にダメージ!」


 リディアが呟く。


「……そういうこと」


 主人公が振り向く。


「わかったんですか?」


 リディアが言う。


「あなたの能力」


「はい」


「レベルアップでも」


「はい」


「スキルでもない」


 一拍。


「経験値そのものです」


 主人公が首を傾げる。


「普通では」


「はい」


「人はそんなに死線を経験しません」


「確かに」


「だから」


 リディアは笑う。


「そのスキル」


 一拍。


「あなたにしか発動しない」


 主人公が言う。


「つまり」


「はい」


「俺」


「はい」


「無駄に死にかけてたわけじゃない?」


「ええ」


 リディアは言う。


「あなたは」


 一拍。


「世界で一番“死にかけた冒険者”です」


 主人公が苦笑する。


「微妙な称号」


 しかし。


 次の瞬間。


 スキルが光る。


【死線蓄積:進化】


【戦闘演算開始】


 主人公の視界に。


 線が見える。


 ドラゴンの弱点。


 動き。


 未来。


 全部。


 主人公が呟く。


「勝てる」


 リディアが笑う。


「やっと言いましたね」


 主人公が走る。


 ドラゴンへ。


 英雄試験。


 災害級魔物。


 王都の運命。


 全部。


 背負って。


 彼は剣を振り上げた。


 そして。


 この瞬間。


 王国は理解する。


 この男は。


 天才でも。


 勇者でもない。


 ただ。


 何度も。


 何度も。


 死にかけた。


 その結果。


 誰よりも“戦いを理解してしまった男”だった。

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