週刊誌『秋分』

鈴木

【驚愕スクープ】「病気だから実習不可」看護大を追われた青年の慟哭 ――聖職者の卵を襲った「安全」という名の非情な排除 白衣の天使を育てるはずの学び舎で、一体何が起きていたのか。

 都内近郊の喫茶店。指定された席に座っていたのは、深く被ったキャップのツバで表情を隠した青年、佐竹隼人さん(仮名・20歳)だ。かつて看護師を志し、難関を突破して入学したはずの彼がいま、手にしているのは教科書ではなく、自身の「診断名」が記された数枚の書類だった。


■「見た目は普通」という地獄

「……精神疾患なんですよ。社会性コミュニケーション障害ってやつ。あと、てんかんも」

蚊の鳴くような声で、彼は切り出した。記者がその詳細を尋ねると、彼は一瞬だけ顔を上げ、挑むような視線を向けた。

「どんなものか知ってます? ……知らないですよね。上手く話せないやつです。てんかんは脳が異常な電気を出して倒れてしまうやつ。倒れないやつもありますけど……。調べて下さいよ。精神疾患って、何が挙げられると思いますか?」

記者が「ADHDや統合失調症、PTSDなどか」と答えると、彼は吐き捨てるように言った。

「そういうのが“有名”なんですよ。事件の損害賠償でもPTSDを発症したとか、そんなことばかり。僕のは障害者手帳ももらえないようなやつで。だから、見た目は普通なんです」

ギリッ、と奥歯を噛みしめる音が静かな店内に響く。その「普通に見える」ことが、彼にとっては呪いとなっていた。


■「3年間発作なし」でも下された非情の宣告

彼が直面した壁。それは看護学生にとって最大の関門である「臨地実習」だった。

 佐竹さんは持病である「てんかん」を大学側に申告していた。しかし、実習を目前に控えたある日、教官から呼び出され、信じがたい言葉を突きつけられたという。

「いくら薬を飲んでいて、発作が3年も起きていないと言っても、『もし実習中に倒れてしまったらどうするんだ』と。それだけで実習への参加を拒否されたんです」

主治医からは「日常生活および学習に支障なし」との診断書を得ていた。それでも、大学側が優先したのは一学生の未来ではなく、実習先病院への「忖度」と、万が一の際の「責任回避」だった。


■「分かってしまう」からこその絶望

話が進むにつれ、佐竹さんは自嘲気味な笑みを浮かべた。その言葉は、彼がどれほど自分自身を責め、大学側の理屈を飲み込もうと苦闘してきたかを物語っていた。

「……気持ちは十分わかりますよ。看護師って人の命を助ける仕事ですし、倒れたら迷惑です。実習なので、そこにいる医療現場の人とかに迷惑をかけてはいけない……みたいなことも大学は思ってるのも分かりますよ」

淡々と語るその口調が、かえって痛々しい。正論という名の凶器が、彼の志をじわじわと削り取っていったのだ。

「安全第一。そう言われれば何も言い返せない。でも、病気がある人間は人を助ける側に回っちゃいけないんですか? 看護って、そういうものなんですか……?」

震える手で何度もキャップのツバを直すその姿は、夢を絶たれた若者の、あまりにも孤独な抵抗に見えた。


■放置される「教育現場の選別」

本誌が当該大学に取材を申し込むと、「個別の事案については回答を控えるが、学生の心身の状態を考慮し、適切な指導を行っている」とのテンプレ回答が返ってきた。

多様性が叫ばれる昨今、医療現場でも障がい者雇用や理解が進んでいるはずだ。しかし、その手前の「教育の場」では、今なお「効率」と「リスク排除」による苛烈な選別が行われている。

 佐竹さんのような“境界線”に生きる若者たちの叫びを、社会はいつまで黙殺し続けるのか。

(本誌取材班・田中)


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