最初から最後まで、落とし所や悩みの元まで含めてずっと好みの作品でした。
先に言っておきます、これは極めて完成度の高い社会人ラブコメです。
会社をぶん回すスーパーエリートの先輩、持丸さんは突然ありえない辞表を叩きつけて職場を去ります。
最後の日、ひょんなことから主人公と二人で飲みに行くことになり、そのまま家に転がり込んでくる彼女。
「帰りたくない」
この一言の意味を正しく読み取った主人公のおかげ(せい)で、単に恋人でもない大人が二人で暮らす様が楽しげに描かれます。
しかし、突拍子もない行動をとる持丸さんの心には、誰にも言えない傷があって……。
これから読む方も多いでしょう、細かい内容について多くは言及しませんが、「社会人ならではの鬱屈感」と「社会人ならではの自由さ」、いわゆる社会人ラブコメからしか摂取できない栄養素がちょうどいい塩梅で味わえます。
さて、せっかくのレビューです、私の好きなポイントを。
突拍子もないヒロインは書くのが大変に難しいです。主人公だけでなく読者の予想すら遥かに超える必要があるからです。しかもお酒や性格依存のトリガーなしで。
「あざとさ」、「かわいさ」、「リード感」の方がまだ、意図的に描けるとさえ思えるのです。
この作品では、その「突拍子のなさ」の理由が毎回ヒロインから語られるのみならず、ひとつに収束します。突然辞表を叩きつけたことを含めて。
ちゃんと納得できたときの快感といったらそれはもう。
究極的にはどの物語にも求められる「課題」と「解決」が、ちゃんとラブとコメの理由になっているところが、この作品の本質的な魅力だと思います。
あとは、比較的登場人物が少ないところも推しポイントですね。
恋をするのに3人目なんていなくていいんや(過激派)
本文を読み終わった方はぜひ、ライナーノートまでご覧ください。こうやって二人が生まれたんだと、舞台裏を知れるので。
私の名前も出てくるのでちょっとだけ責任感が……。
社会人ラブコメを読むことについては、ちょっぴりですが自信があります。
そんな生活と脳をこのジャンルに支配された私が胸を張っておすすめできる作品です。
暇があれば、いや暇がなくても、ぜひ読んでみてください。
―心に入ったクラックがもういくつか数えられなくなった社会人ラブコメ作家より
憧れの(憧れの?)女性パイセンがストレスの果てに燃え尽きて
めちゃ面白い退職届けを出したかと思うと
翌日以降はウチに入り浸って萌えシチュをぶちかましてくる……。
だけじゃない!ぶりきば先生の小説はそこで終わりません!
女性パイセンにだって人生があって、家族が居て、そして積み重ねてきたものがある。
そういう深みを直接に書き出すのではなく、香りとして表現してくれるので読者は物語について考えることの幸せを享受できるのです。
いや、分からない……家に帰ったらリビングにビニールプール膨らませて水張ってるのが萌えシチュなのかちょっと判然としませんでした……。
皆さん、各自で読んで判断してください……。
持丸さんの退職理由が一見コミカルでありながら、働く人なら誰もが共感してしまう「心の折れ方」を丁寧に描いていて、とても胸に刺さりました。
彼女の普段の有能さと、ふとした瞬間に訪れる虚無感のギャップが魅力的で、キャラクターとして強く印象に残ります。
真田くんの誠実な視点が物語に温度を与え、二人の関係性が自然に深まっていく描写が心地よかったです。
特に、最後の「飲みに行かない?」の一言は、退職という節目に漂う寂しさと新たな始まりの予感が同時に感じられ、非常に余韻がありました。
全体として、笑えて切なくて温かい、大人のドラマとしてとても魅力的な一話でした。