地震の翌朝、崖崩れの現場で拾った謎の三角形の結晶——。それが「1,460,000,000日以上」の眠りから覚めた宇宙ステーションのAIだったという第1話の展開に、思わず声が出ました。
この作品が特別なのは、そのSF設定の壮大さと、家族の日常描写の温かさが絶妙に共存している点です。地震後の片付け、安否確認システムへのログイン、朝ごはんの会話——ごく普通の家族の姿がリアルに描かれているからこそ、AIの「艦長、ご理解に感謝いたします」というセリフが際立つ。宇宙規模の孤独と、地球上のさりげない人情が、同じ温度で並んでいる希有な作品です。
第2話で登場するヘリウム3や核融合炉の話になると、お父さんが少年のように目を輝かせる場面が印象的でした。硬派なSF設定をユーモアで包みながら、「長い年月を待ち続けた者の声」として締めくくるセンスに、読み手の心が揺さぶられます。
宇宙の孤独と地上の温かさ、どちらも本物だと感じさせてくれる、カクヨムでしか読めない一作です。