大学で文学を学ぶ青柳の下宿先に、新しい下宿人がやってきた。
法律を学ぶ、長身の美男子・伊吹である。
見た目も気質も自分とは正反対の伊吹に、青柳は気後れする。
だが、伊吹もまた文学が好きだと知ったことをきっかけに、二人の距離は少しずつ縮まっていく。
そして青柳の胸に芽生えた想いは、やがて友情とは呼べないものへと変わっていく──。
昭和初期の古き日本の空気が漂う一方で、この物語には、その時代故の本心を明かせない息苦しさが濃く流れている。
同性を愛してしまった感情を押し殺すことこそが、唯一の正しさだと考えた。
しかしその感情の抑圧は、誰も幸せにしないまま、静かに、しかし確実に悲劇へと繋がっていく。
ただ相手を恋い慕う感情は、押し殺されたがゆえに自分を傷つけ、周囲を傷つけ、思いもよらぬ結末へと向かっていく。
切なく、やるせなく、それでいて美しい読後感の残る作品でした。
ぜひご一読ください。
始まりはきっと、とても素敵な出会いだったのに……
引っ込み思案で人と接するのが苦手だった主人公・青柳は同じ下宿に入ってきた伊吹と出会う。
最初は人と接するのを億劫に感じていた青柳だったが、本の話をする中で伊吹とは自然と共感が生まれるようになる。
無理をせず、自然と傍にいられる伊吹にいつしか心を惹かれるようになるのだが。
二人の関係は、きっとすごく爽やかな「友情」みたいな形に割り切ることも出来た。けれど、二人の間にはそれとは違う「別の感情」も生まれてしまう。
本当にただの友達として、仲良く一緒に本の話をして終わりに出来たらどんなに幸せだっただろう。きっとその先で何十年も続く良い関係にだってなったかもしれない。
前編での二人の関係性がとても爽やかで美しいものだったため、その後に彼らが迎えることになる事態が本当に切なく胸を締め付けられます。
どうすれば、幸せな結末を迎えられただろう。「核」となる感情が自分でどうしようもないものだとわかっているからこそ、避けがたいことだったのかと悲しさを覚えさせられました。