空前

空は、いきなり俺たちに向かって手を翳した。


「あれは…危ない!避けて!!」


ことなの声に、俺はとっさに身を伏せ、頭を抱えた。


そのとき、耳元に鋭い風の音がよぎった。


次第に、何か鈍い音が聞こえた。


その鈍い音の元を辿ると、俺たちの後にあった木にひびが割れているのが見えた。


その木は、次第に枝のように折れ、轟音を立てながら倒れていった。


「空…!」


「おい、11番。何だ、今の音は。弱くしろといったはずだが…」


「…弱くした」


「…わかった。できれば殺すな」


「うん」


俺は、血の気がさしていた。


もし、あれが俺やことなに当たっていたら…


頭では理解していても、認めたくなかった。


空が、俺たちを攻撃した。


空が…俺たちの敵に回った。


「空ちゃん…どうして…私がわからないの?」


「…」


「私だよ!ことなだよ!思い出して…!」


空は、ことなに答えず、再び俺たちの方へ手を翳した。


「ことな!避けろ!!」


俺は、とっさにことなを押し倒した。


そして、再び、空気をちぎるような音が俺たちの頭上をよぎった。


「ことな、大丈夫か?」


「はるくん…」


「気持ちはわかるけど…今の空は敵だ」


「そんな…」


「あの目…いつもの空と違う。多分だけど…洗脳されてる。洗脳を解ければ…」


「…!」


その言葉に、絶望に満ちたことなの目に、微かな希望の光が灯った。


「だから…戦うしかない」


「はるくん…うん!空を取り戻そう!」


「よし、じゃあ…今まではなんとか運良く避けられたけど…俺には空の攻撃が見えない」


「ことなは、最初の攻撃が来る前に反応してたよね?ってことは…」


「うん、私には見える…!」


ことなは、あのあと場による「感知」の訓練に励んでいた。


まだまだ不完全とは思うけど…空のNEOは強力な分感知しやすい…!


これならなんとか…!


「よし、じゃあ…やろう。空を助けるんだ」


「うん!」


「…立ち上がった」


空は、また手を翳した。


「ことな!」


「左と正面!」


俺たちは、素早く右に回避した。


ことなのいった通り、後からは二発の空気の弾が木にぶつかる音が聞こえた。


「よし!」


空が全力を出せば絶対に適わない。


でも、この地形なら力加減をするしかない…!


しかし…避けてばかりでも勝ち目はない。


空のNEOの容量を考えるなら…先に消耗させられるのは確実に俺たちだ。


ならば…


「ことな、俺に考えがある」


「成功するかはわからない…でも…やるしかない…!」


「はるくん…?」


「もし俺が暴走したら、殺してでも止めてくれ」

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