第15話 地下農業迷宮15

 トーマスさん一家の住居については、今は特に要望はないらしくそのまま住んでもらうことになった。


 そしてあたしは今、七階層で数体のゴーレムに埋もれている。

 農作業の手伝いだからパワーを出すために全体的にがっしりした体型にしたのだけど、さらに二メートルほどの高さにしたからいっぱい並ぶとすごい圧迫感。

 普段はあちこちに散らばっているだろうからそこまで圧迫感に悩まされることはないはず。


「あ、野菜とか入れる箱はどうしよう……」


 トーマスさんにどんなものが必要か確認してからセドリックさんに手配を頼もうかな? 作ることもできるけど、外に出すものだから一般的に流通しているものじゃないと困るよね?

 箱が必要になるのはお野菜ができてからだろうし、まだ余裕があるはず。一応、ここって王立だから予算で落ちるよね?


 箱なんかは外に運ぶときには必須だけど、この中ならゴーレムが運んだらきっと楽よね。

 荷車型や、トロッコの荷台のような箱型の自走するゴーレムも作ってみた。需要がなければ崩して人型に作り直しましょ。


 あとはリーナの要望か……牛って、どんなだったっけ?

 えーっと……



「アルセラ様? こちらにいらっしゃいますか?」


 はっ!


「ええ、ここにいるわよ」


「またたくさん作りましたね。夕食のお時間ですから作業を止めてください」


 はーい。やっぱりあたしにはミアが必要ね。そんなに時間が経ってるとは思っていなかったわ。ありがとーう。


 ふとミアが一点を見つめて、何かもにょっとした顔になった。……気にしない、気にしない。



 ご飯はエルナさんと一緒に休憩所で作ってくれたらしいのでミアと一緒にアルゴに乗って休憩所へ行く。


「これ便利ですね」


「七階層から各階層を歩くと結構な距離なのよね」


 もうちょっと振動がなんとかなるといいのだけどね。宙に浮かせると何かあった時に危ないからできないし、あまり多くを求めるのもよくないかしらね。


「生活に足りないものはあった?」


「休憩所は調理器具と食器が全然足らないですね。住居の方はシーツ類や着替えと石鹸などの消耗品を持ち込めばすぐに住めると思います」


 さらっと言ったけど結構あるわね。

 マジックバッグに詰め込んだら一回で運べるかしら。



 休憩所に着くとトーマスさんたちは食べずにあたしが到着するのを待っていてくれたらしい。先に食べててくれてよかったのに。

 んー、おいしい。


 ご飯を食べ終わる頃に詰め所で待機していたはずのトビアスがやってきた。


「アルセラ様、夜道の移動は危険なので今夜はこちらでお過ごしください」


 あたしは家があるから構わないけど、トビアスとカイルはどこで寝るの?


「野営は訓練で慣れていますのでお気になさらず。それにここは騎士の詰め所があるので全く問題ありません」


 うーん、詰め所か……今後も騎士が常駐するなら奥に寝る場所を作っておくのはありよね。

 よし、ちょっといじってくるから、カイルと一緒に詰め所の外に出ていてくれる?

 壁の土はたくさんあるからいいとして、ベッドの材料は……せっかく育ったところだけど家の周りの木からもらおうかしらね。

 部屋の増築と簡易のベッドの作成。今夜はお布団ないけど、地面に寝るよりはいいわよね。

 アルゴ、コアまでよろしくね。



 ぱぱっと詰め所の設計図を引き直して登録しなおしていく。よし、反映されたはず。確認のために入口の騎士詰め所へと行く。

 騎士の詰め所ではトビアスとカイルが詰め所を見つめてぽかんとした顔をしていた。


「土が独りでに盛り上がっていく様子は何度見ても見慣れませんね」


 そういうものだから深く考えちゃだめよ。あたしは全部エネルギーのおかげってことで片付けてるからね。まぁ、あとは心の中でファンタジーだからとかね。これは誰にも言えないけど。

 世の中不思議なことなんていっぱいあるものよ。


「布団がないから体が痛くなるのは変わらないでしょうけど、土まみれになるのは避けられると思うわよ」


 薄く細い板で体に合わせてたわむように作ったベッドだから土の上よりはマシだと思うのよね。布団は明日、必要なものとしてセドリックさんに請求しましょうね。

 あ、せっかくのお泊まりだから侵入しようとする人がいたらどんな人だったか確認してくれる? 捕まえなくてもいいから。


「承知しました」


 入れないことが分かった時点で諦めてもう来ないかもしれないけど、一応ね。



 翌朝、城からきたセドリックさんを捕まえて欲しいものを伝える。


「シーツや消耗品は予備があるのですぐに出せますが、布団と食器はすぐには難しいですね」


 手配だけは進めておくように指示書をその場で認めてくれた。ミアはそれを持って必要なものを揃えに行くからマジックバッグを持たせる。


「こ、こんな高級なものをお借りしてもいいのですか?」


 狼狽えているけど、あたしに必要なものを揃えてもらうのだから当然でしょ?


「ミア、この指示書は辺境伯様へ直接渡して許可を得て下さい」


「へ、辺境伯様に、ですか?」


 ああ、いじめによる妨害防止ね。さすがに辺境伯様からの命令なら邪魔できないだろう。


「これでも邪魔してくるようなら完全に切れますね」


 ……怖いセドリックさん、再びですね。

 ミア、辺境伯様は優しいから大丈夫よ。多少のことなら笑って済ませてくれるからね。


「優しいからといって礼儀知らずでいていいわけではありませんから、最低限の節度は持って接して下さい」


 やらかした身としては耳が痛いわ……あれ? セドリックさん、もしかしてあたしに言ってる? 辺境伯様には普段はちゃんとしてるわよね?


「ベルノルト子爵に対しても、ですよ」


 え? そこは今さらじゃない?

 急に態度を変えた方がマティアス様も対応に困るのではないかしら? それにマティアス様と相対することもないだろうしね。

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