第十話:階級の断層、および火花の対話

夕陽は王立学園の壮麗な校舎の影を地面に横たわる巨人のように長く引き延ばし、中庭の石床を乾いた血のような朱色に染め上げていた。

学園の第十二位、三回生カイト・ブラウシュタインは新入生が突きつけたあまりに不遜な、そしてあまりに無謀な挑戦状に対し、侮蔑を通り越した一種の清然たる殺意を抱いていた。

ブラウシュタイン家は代々「蒼石の守護者」と称される冷徹な魔導騎士を輩出してきた名門であり、その直系である彼にとって三年間の研鑽は神聖な義務であった。

それを十五歳の無名な新入生に否定されることは自らの血脈そのものを泥で汚されるに等しかった。


「思い上がるなよ、七百二十一位。二年の歳月というものが、どれほど絶望的な実力の溝を穿ち、残酷なまでに才能を峻別するか。その事実を貴様の未熟な肉体に刻み込んでやろう。ブラウシュタインの名にかけて貴様の傲慢を粉砕してくれる。」


カイトが細剣(レイピア)を抜くと大気中の魔力が一斉に鳴動し、彼の周囲に青白い風の刃が死の輪舞(ロンド)のように渦巻いた。

彼は「疾風の魔導剣士」と謳われ、その刺突は一秒の間に数千回、虚空を縫うと言われている。

カイトは、ハクの「戦士」というジョブの限界を経験則という名の傲慢な定規で見切っていた。

戦士とは肉体の延長線上に鋼を置くのみの、もっとも原始的で、もっとも洗練を欠いた職業であると。

ブラウシュタインの洗練された剣技の前ではそれはただの棒振りに過ぎないと確信していた。


対するハクはただ静かに安物の鉄剣を正眼に構えていた。

彼の肉体はすでに闘争という名の甘美な予感に震え、血管を流れる血は殉教の熱を帯び始めている。

ハクにとって、この決闘は家名を守るための誇り高い儀式などではない。

十二位という座を奪い取り、家族をあの湿った貧困から救い出すための、生存を賭けた略奪であった。


「二年の歳月、そして高貴な家名か……。確かに、君は学園という名の温室で洗練された技術と、教科書の中にある正解を磨いてきたのだろう。だが、僕はその間、ただ一秒の安逸も許されぬ地獄で肉体を削り、魂を叩きつけ続けてきた。その差を、君の優雅な家名の重みだけで測りきれると思わないことだ。」


開戦の合図は風の裂ける音であった。

カイトの踏み込みは視神経が捉えるよりも早く、電光石火の速さでハクの懐を抉った。

風を纏った細剣がハクの肩口を浅く、しかし鋭利な殺意をもって切り裂く。

鮮血が春の夕闇にルビーの飛沫となって舞った。

カイトの技術は確かに本物であり、ブラウシュタイン家の名が決して虚飾だけで築かれたものではないことを証明していた。


「速いな。」


ハクは短く呟いた。

しかし、その瞳には驚きはなく、むしろ深い充足が宿っていた。

肩を走る激痛。

それこそが、ハクにとっての「実在」の証明であり、殉教騎士としての力を引き出すための唯一の鍵であった。

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