潮と呼吸が結ぶ静かな男の絆、痛みを越えて赦しへ潜る佳作。端正な筆致光る
- ★★★ Excellent!!!
本作が狙うのは、海・呼吸・手順が結び合う具体の連鎖によって「男同士が救い直していく」過程を静かに可視化することです。第1話で燃え尽きた湊人が久遠島へ帰郷し、ポスターの『青』が錆びた心の鍵を開ける導入から、第2話では颯太との再会と耳抜き・マスククリアの所作が「吐くことを意識する」呼吸訓練として機能し、言葉ではなく身体のリズムから信頼が生まれます。第3話の寄り合いで涼介が「兄貴を死なせた男だ」と告げる緊張が物語の対立軸を確立し、第4話では港湾開発と父の自死が重なって『過去に潜る』必然を提示します。第5話の縁側の腐食を颯太が即応修繕する場面や焚き火の夜、湊人の「上司を殴って辞めた」告白は、生活の手触りと心の修復を重ね合わせる美点です。第6話では台風の夜の『人工呼吸』が明かされ、湊人の「ありがとう、颯太兄ぃ」—「明日、スクールに行きます」「……待ってる」へ収束し、呼吸の再獲得=関係の再始動という作品の意図が端的に結実します。ブロマンスを性愛に短絡せず、信頼の再構築と赦しへの歩みを端正な筆致で描く、気品ある佳品です。