最初からテンポが速いのに、読みにくさがない。軽い口調でスイスイ進む会話の中に、「立場がある大人」がじわじわ追い込まれていく可笑しさがあって、ページをめくる手が止まりませんでした。
面白いのは、主人公が“強い力”でねじ伏せるのではなく、言葉の組み立てと、前提の置き換えで状況をひっくり返していくところです。
「かわいそうだから助ける」という善意が、本人の論理にぶつかった瞬間にぐらつく。そのぐらつきが、衛兵さんたちのツッコミや混乱として出てくるので、笑えるのに変にリアルでもあります。
それと、主人公の語り口がわりと乾いていて、過去の出来事も感情で引きずらず「損切り」として処理してしまうのが印象に残りました。軽さの中に、妙に割り切った目線が混じっていて、そこがただのギャグになり切らない怖さにもなっている気がします。
最後に「理由を言えばわかってもらえます?」で切られるのがズルい。ここまで“常識”を揺らしておいて、肝心の種明かしは持ち越し。
この主人公が“飢えない”をどんな形で説明してくるのか、そしてその説明が王都のルールや人の優しさにどう刺さっていくのか――その先を確かめたくなりました。