追憶のボーイミーツガール ⑥

 長い追想が終わり、俺とフェキシーは現実の世界に戻っていた。


「『ゴーストタウン』が消えれば、たぶん同時にわたしのこの偽りの命も終わる」


 フェキシーはベッドで俺の手を握り、スタッフロールも終わり、暗くなった液晶を見つめていた。


「それでも、わたしはあの世界を壊さないといけない」


「……それなら、俺も一緒に駆け抜けるよ」


 フェキシーは意外そうな顔で俺のことを見上げた。


「全部をぶっ壊そう。永遠に残る一瞬の輝き……そういうのが好きなんだろ」


 今度こそ、俺は上手く笑えていただろうか?


「うん、大好きっ」


 それは分からないが、フェキシーはそれを聞いて笑ってくれた。

 目の端に浮かんでいた涙がこぼれ、それから俺たちはもう一度だけ抱きしめ合った。

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