【消灯】配信中に隠しダンジョンを見つけたら伝説になってしまった!?(butこれでn度目です)

水定ゆう

第1話 ケセナイアカリ

「みんな来るよ!」


 緑髪の少女——風狐ふうこは声を上げた。

 少女達しかいないダンジョン一階層、奥の方まで辿り着くと、モンスターのレベルも上がる。


「グラウッ!」


 全長三メートル程の肉所モンスター。骨格的にはクマが一番近いかもしれない。全身黒い毛皮に覆われており、鋭く分厚い爪を見せつける。

 ダンジョンの床を蹴り込むと、真っ先に視界に入るのはいつも風狐だ。昔から目立ってしまうので、それがモンスター相手にも通じてしまうのが、偶に傷になる。


「やっぱり私だよね?」


 風狐は明らかに狙われている、

 これが一人ならば、距離を取って視界から外れようとする。

 けれど今の風狐はその必要がない。何故なら、頼れる四人の友達が付いてくれるから。


「(ガツン!)大丈夫よ、私がいるんだから」

「ありがとう、エクレアちゃん!」


 黄髪(金髪)の少女——エクレアが大きな盾を構えていた。

 風狐が真っ先に標的にされるのは分かっているからか、慣れた動きを見せる。

 モンスターの攻撃を左手に持った盾で受け止め切ると、右手には剣を手にし振り下ろす。


「風狐、大丈夫?」

「うん。エクレアちゃんが止めてくれたおかげだよ」

「いつものことよ。ほら、みんな一気に攻める!」


 エクレアが号令を出すと、開幕で繰り出されるのは風狐の攻撃では無い。

 盾の真横を駆け抜けると、水滴が風狐とエクレアの頬に触れる。

 鋭利な爪が、モンスターの顎を貫いた。


「アタシの道を開けやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 腹の奥底から声を上げたのは、青紙の少女——ドライブ。

 ドライブとは言っても、車のドライブではなく、バスケのドライブだ。

 ディフェンスを素早くかつ力強く抜き去ると、モンスターをゴールに見立て、スモールフォワードらしい動きで先制する。


「グラウラァァァァァァァァァァァァァァァ!」


 爪形状の武器が顎を貫いた。モンスターとは言え、骨格があるからだ。

 顎の骨を粉砕すると、あまりの痛みに狼狽えるが、この程度では倒れてくれない。

 ギロリと浮かんだ瞳が、ドローンのカメラレンズを凝視した。


「へぇ、なかなかやるじゃねぇか」

「ドライブ。変に攻めない!」

「はぁっ!? アタシが前に出れば、二人に攻撃が行かねぇだろ? だからよぉ、アタシがガンガン前に出るぜぇ!」


 ドライブは配慮が出来る前衛だ。言動からだと、明らかに暴走している。とにかく攻撃一辺倒に見えるかもしれないが、風狐達は知っていた。これはドライブなりに考えた結果だ。

 自分から前に躍り出ることで、注目を集めて視線を釘付けにする。

 そうすれば盾役タンクのエクレアとメンバー唯一の射撃種な風狐が自由になる。


「全くいつも通りね」

「うん。でも私よりも注目を攫ってくれたら、凄く凄―く助かるよ。だから私も……」


 風狐は腰のホルスターから拳銃を二丁引き抜く。

 白と黒の拳銃で、FUKOと刻印されている。完全に専用の銃だ。

 銃口をモンスターに向ける。引き金を引くと、魔法弾が放たれ、顔に直撃した。


「当たった……けど」

「あんまり効いてないわね」


 如何やら顔はかなり硬いらしい。そのせいで攻撃が余り通らない。

 魔法弾は効く相手と効かない相手がいる。それが分かっていながらも、風狐はこの拳銃を凄く気に入っていた。


「……でも」


 例え効かなくても、確実に意味はある。

 それもその筈、壁と床を黒い影が伝う。


 高速で移動し、モンスターの背後を取る。

 明らかに普通の影では無いのだ。


「「今だよ、シュタインさん!」ちゃん」


 風狐とエクレアは叫んだ。

 「分かっている」と言いた気で、影の中からキラリと光る刃が飛び出た。


 何処となく、ヤギの頭に似ている。

 その中でも、特別角が特徴的だ。


「(サッ!)取った!」


 無防備な背中を狙った。

 振り下ろした鎌は確かに突き刺さる。

 グサリと刺さり、思いっきり引き切ると、血飛沫が舞った。


「グラウンラァァァァァァァァァァァァァァァッ!」


 モンスターは大絶叫を上げる。

 流石にこれは効いたみたいだ。

 容赦の無い一撃で、少し引く。


 黒髪の少女——シュタインボック。

 影の中から飛び出し、また影の中へ消える。

 役目を果たし切った……筈だが、やはり倒れない。


「嘘でしょ!? これでも倒れないの!」

「マジで言ってんのかよ。ふざけんなよ、ここ一階層だぞ!」


 エクレアとドライブがキレていた。

 モンスターはとても高い防御力を誇る。

 そのせいか、いくら攻撃を加えても、倒れてくれる気配がない。


「みんな落ち着いて。もしかしたら、核があるのかも」

「核か。けどよ、アタシ達の火力じゃな」


 モンスターには核と呼ばれるものがある。

 それは所謂心臓で、モンスターの生命器官だ。破壊することができれば、たちまち動きを止め、風狐達の勝ちになる。


「大丈夫だよ。だって、私達には!」


 頭上を見上げる風狐。

 天井付近を、真っ赤な火の玉が漂う。

 モンスターの真上を陣取る。


「ねっ、えんちゃん!」


 風狐は叫んだ。すると真っ赤な紅の流星が降り注ぐ。

 モンスターの真上から落下。特別製の刀を構えると、炎を推進剤バーニアスラスタの代わりにして、急降下する。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 勢いそのままにモンスターの背中に落ちた。

 刀が突き刺さると、核まで簡単に到達。


点火イグニッション!」


 炎が弾けると、少女が姿を現した。

 赤髪の少女——えんはダンジョンだと勇ましい。刀を突き刺し、スイッチを押し込むと、刀の刀身が爆発した。


 ドカァーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!!


 けたたましい爆音が響き渡る。

 モンスターの背中をから炎が噴き上がる。

 体の内部から破裂したみたいで、木っ端微塵に吹き飛んだ。あまりにも可哀想だが、こうしないと倒せない。


「皆さん、入って!」


 エクレアが盾を構えた。

 風狐達はその後ろに入り込む。

 モンスターの破片が飛び散ると、壁や床に叩き付けられ、異臭を放った。これがダンジョンの現実なので、特に気にも留めない。


「相変わらず派手よね」

「全くだぜ。おーい、焔、終わったかー?」

「う、うん」


 爆発の中から現れた少女。迫力は全く無い。

 何処か消極的で、頼りない雰囲気がある。


「焔ちゃん、お疲れ様!」

「風狐ちゃん……うん」


 パン! とお互いハイタッチをした。

 風狐と焔はいつもハイタッチをしている。本当に仲がよくて、特に焔は風狐と一緒だと元気があった。


「相変わらず仲良しね」

「仲良しの方が楽しいでしょ?」

「そうだけどなっ」


 結局仲良しの方がいいに決まっている。

 何を当たり前のことを言うのかと、風狐は答えた。


「それより、素材の方はどうかな?」

「回収したぞ」

「流石、シュタイン!」


 影の中から姿を現したシュタイン。

 爆発する瞬間に、影の中に素材を隠したらしい。

 おかげで罅は入ったけれど、核となる魔石(正式名称:魔力生体器官(心臓))も、手に入ったみたいだ。


「それじゃあどうする? もう少し先に行ってみてもいいけど……辞めよっか」


 とりあえず、一階層のモンスターと激戦を繰り広げた。

 それだけで疲労が溜まっている。今日はここまでで切り上げる。


「そうね。それがいいわ」

「アタシの武器も削れてるしな」

「どっちでもいいぞ」

「わ、私は、みんなが言うなら……」


 とりあえずここで一度切り上げる。

 このダンジョンではいつものこと。

 特に否定的な意見もなかった。


「それじゃあ今日はここまで。また時間の配信もチェックしてね。せーのっ!」

「「「ケ・セ・ナ・イ・ア・カ・リ、でした!」」」


 いつの間にか目の前まで降りてきたいたドローン。その形は独特で、まるで龍だった。

 ドローンだけど意思があるのか、目の形をしたカメラ、耳の形をしたスピーカー、口の中にはノイズキャンセリングマイク。全て揃っていて、手を振って配信を締める少女達の活躍を世界中に届けていた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【あとがき・お願い】


読んでくれてありがとうございます。


よければブックマーク登録・感想・できれば★をお願いします。


物語の構造上、突然長い話になったり、変な所で区切ったりすると思いますが、ご愛嬌と言うことです。


現在、あらすじにも書いていますが、この章だけで完結(簡潔にまとめています)予定ですが、気長に待っていてくれると嬉しいです。

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