第4話 異世界召喚は突然に...

 目が覚めると、そこはどこまでも真っ白な場所だった。


「夢なのか...?確か、ユイさんとカフェにいて、急に眠気に襲われて...」


 見た感じ、外傷とかはなく、ただ思考だけが追いついていない。


「はるきくん、目が覚めたんだね!」

「ユイさん――」


 背後からユイさんの声が聞こえ、俺は振り返った。


「......え?」


 そこには筋骨隆々の半裸の男がサイドチェストをしていた。


(いやいや、どういう状況!?)


 ただでさえ、追いついていない思考がさらにぐちゃぐちゃにされた。

 なんで知らない男がサイドチェストでポージングしているんだ?いや、そもそもなんで半裸?


「その様子だと、今の状況が全く理解できていないみたいだね!」


 ユイさんの可愛らしい声とはかけ離れた、野太い低音ボイスが響く。


「ここはどこで、あなたは誰ですか?」

「まあ、その質問になるよね〜ここは異空間ってのが近い表現かな。そして、私は神的な存在こと、異世界案内人です!」


 男は「はい、サイドチェスト!」と言わんばかりに、ポージングをしながら意気揚々と説明する。


「いや、言ってる意味とそのポージング意味が分からないんですけど...」

「ポージングには特に意味はない!」


 そんな自信満々に言われても...


「簡単に言うと、私はマッチングアプリを使って、異世界召喚する人材を探していたんだよ。はるきくんには、騙すような真似して悪いとは思ってるよ」

「こんなタイプの異世界転生もあるんですね...もしかして、俺が今まで話してたのってあなたなんですか?」

「はるきくんは理解が早くて助かるなぁ〜そう、私がユイだよ!」


 ユイさん?は瞬時に声を変える。相変わらずポージングしてるし、声と見た目が合ってねぇ...


「あっそうなんですね...それで、俺はどんな世界に召喚される感じですか?」

「はるきくんが想像してるような、剣と魔法の異世界で合ってるよ〜ただ、魔王とかはいないから、比較的に過ごしやすいんじゃないかな?」


 そんな天気予報の「日中は比較的に涼しいので

過ごしやすいと思いますよ〜」みたいなテンションで言われても...


「な、なるほど...」

「まあ、詳しい情報はこれを見てもらえれば大丈夫からさ!」

「ん?なんですかこれ?」


 ユイから何かの冊子を渡された。

 確認するとそこには「旅のしおり」と可愛らしい丸文字で書かれていた。


「いや、可愛いなっ!」

「ありがとっ!昨日、徹夜で作ったんだよね〜後で目を通しといてね!」

「あ、そうなんですね。ご丁寧にありがとうございます...」


 見た目はボディビルダー、頭脳はキラキラ女子

って感じでいつまでも慣れないな...


「まあ、お話はこれくらいにして、実際に異世界を見て感じてもらった方がいいと思うから、そろそろあっちに召喚しちゃうね!」

「え、そんな急に!?」

「じゃあ、後のことは旅のしおりを見てね!」

「ちょっまっ――」


 確かに異世界召喚するまでの過程は結構長かったけど、最後はだいぶ巻かれた感じがするな――

 辺りが眩い光に包まれ、それと同時に意識が遠のいていく...

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剣と魔法とマッチングアプリと だーな @dana514

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