いつもの癒しを超えて、鋭く突き刺さる一作

冒頭から鳴り響く「カリ、カリ、カリ」という音が、読者の耳にも確かに刻まれていくようで、とても印象的でした。短く鋭い文の連なりが独特のリズムを生み出し、気づけば物語の世界に引き込まれていました。

ぬいぐるみの内側に「骨」があるという逆説的な発想、そしてノミで削る行為がもつ治療と破壊の二面性は、読んでいてぞくりとするほど鮮烈です。幻想的でありながらも妙な説得力を感じ、頭の中に強いイメージが残りました。

そしてラストで示される　削る音＝書く音　という繋がりにハッとさせられました。ホラーや不条理で終わるのではなく、創作そのものの痛みや祈りを感じさせる結末が素晴らしく、読後に深い余韻が残ります。

普段のほねなぴ作品にある“ほのぼの感”とはまた違い、とても尖った方向に振り切った一作で、そのギャップも含めて強く心に残りました。処女作とは思えない完成度で、読む人の心に確かな「音」を残す物語だと思います。