普通な私

律王

普通な私

 馬鹿みたいに大きい時計の秒針が、カチコチと音を立てている。時刻は夕方の六時を少し回ったあたりだった。帰りのホームルームが終わったのが三時過ぎだったから、実に三時間も隠された教科書を探し回っていたことになる。ここのところ毎日であるから、こんな面倒なことをよくもまあ繰り返すものだと感心すらするほどである。

 どうやら私は、周りとは違うらしい。どこに行っても気味悪がられるし、仲良くなっても趣味を言えばどんどん離れていく。私としては、「犬が好き」や「音楽が好き」などと大して変わらない、普通な趣味だと思うのだが、どうも世間一般とは違うみたいだ。

 手に持った教科書に目を向ける。「数学」の字は緑色に塗りつぶしてある。うん、これが正しい。なぜみんなが数学に青色のノートを使うのかがよくわからない。数学は緑だろう。これを正しい色に直すのが、私の趣味なのだが、どうもそんな趣味はみんな持っていないらしかった。

 仕方がない、また明日、みんなの前で正しい色に塗ることがどれほど楽しく美しいことか、説明しなくては。うん、なんてすばらしく、普通な趣味なんだろうか。

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普通な私 律王 @MD_aniki

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