卒業、死別、失恋といった人生の節目にある「さようなら」を主軸とした作品群である。喫煙や溶けた氷、天気予報といった日常の断片を、登場人物の揺れ動く内面や時間の不可逆性と鮮やかに重ね合わせている。言葉にできない想いや、喪失の後に残る微かな温もりを、静謐かつ詩的な文体で掬い取っている。派手な事件よりも心の機微や記憶の重みに焦点を当てた、情緒的な物語集だ。静かな余韻を楽しみたい人、切なくも温かい人間ドラマを好む読者におすすめできる。