サイゴのヒトリ
茶々茶
プロローグ
「
「も、もう、お…」何か言おうとしたが耐えきれず涙を流した。炎が一段と大きく上がり夜空を
バキバキと音を立てて建物が崩れていく。女性の絶叫が一段と大きくなった。あたりに響くのは燃える音と静かな嗚咽だけであった。
その、静かな空間に突然声が響いてきた。
「ハハッハッハハハッハハハハハハッハハハアハハハハハハハハッハハハッハハハハッハハハハハッハハハハハッハハハハハハッハハハハハッハハハハハッハハハハハハハッハハ─」
それはずっと、ずっと燃えている間
フラフラと皆が歩む。まるで光に寄せられる虫のように、一歩一歩。そして全員が
その静かな空間を何かが崩れる音がする。建物が倒壊するような音ではなく、サラサラと砂のようなものが風に吹かれているような音だった。やがてその音は止まり、その場で音を発する物は消えていった。
♢*♢*♢*♢*♢*♢*♢*♢*♢
『完全に火が消し止められたのは消防隊が到着して5時間も経った後であった。周囲にガソリンが撒かれていたことが主な原因らしい。側にいた人によると娘がまだ建物の中に残っていたらしいが遺体らしきものは見つからなかった。火が燃えている間ずっと
「ねぇ
「ムフ〜、面白そうでしょ〜」
「いや、面白そうとかじゃなくて…
「ん〜?なにが〜?」
「え?気づかない?だって遺体らしきものが無いってことは誰も見つからなかったってことでしょ?じゃあさ、この人とかこの人の子供ってどこに行ったの?」
「このニュース、20年以上前のやつでしょ?だったら当時の技術じゃ見つからなかったってことなんじゃない?」
「ってゆーかよく見つけてきたね、それ」
「あ、そうか」
皐月の論理すぎる回答に納得してしまった。
たとえ当時の技術が不正確でも骨が残らないぐらい燃えることは殆ど不可能だと気づくべきだった。なぜ気づかなかったのだろう。普通なら気づくはずだった。いや、気づくべきだった。そのことに気がつくのはこの先一度も無かった。
サイゴのヒトリ 茶々茶 @mikazuki_hibi
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