第5話 送った後のいつもの


SE(二人分の歩行音を数秒だけ流して止める)


「はい、今日はここまでで大丈夫です。いつも送っていただいてありがとうございます」


「これでも、送ってもらうの、ちゃんと感謝してるんですよ?何気ない時間ですけど、こうやって先輩と手をつないで歩いて帰るの、すごく幸せですし。」


「それと、さっきは喫茶店で取り乱してしまいすみませんでした。でも、あれは先輩も悪いんですからね。今度からはせめて二人っきりの時にしてください。」


「今更ですけど、映画のお話をするはずだったのに、なんだか今日は惚気て終わっちゃいましたね。でも、楽しい時間でした。」


「……次のデートはどこに行きましょうか。」


「映画は、今日のがアレでしたし、少し間(あいだ)をあけたいですね。もしお互いにどうしても見たい映画があったら、その時は相談しましょう。」


「うーん、そうですねぇ。定番ですけど、水族館とかどうですか?前に一度行きましたけど、また行きたいです。ペンギン眺めたり、あの大きな水槽の前で、一緒にぼーっとしたいです。」


「あとは、動物園とか。先輩、意外と動物好きですよね。前に猫カフェ行った時、すごく楽しそうでしたし。」


(若干秒、無言)


「確かに遊園地も、そういえば大きいところは行ったこと無かったですもんね。絶叫系は苦手ですけど、先輩と一緒なら観覧車とか乗りたいです。」


「次のデートまでに、また通話で相談して決めましょうね。」


「じゃあ、はい。いつもの、ぎゅーってやつ、してください。」


SE(布がこすれる音)

(以降、右耳からの声)


「はい。ありがとうございます。」


「先輩、何だか細くなりましたか?やっぱり頑張りすぎなんじゃ」


「この後も私と話しながら作業するんでしょうけど、どうか無理だけはしないようにしてくださいね」


「私も応援してますから。」


「はぁ、やっぱり幸せだなぁ……。この時間。」


「別に、何度やっても良いものは良いというだけのお話ですよ。」


「少し、このままでも良いですか。ちょっと浸っていたくて。」


(だいたい20秒ぐらい、無言(吐息だけ))


「はい、もう大丈夫です。先輩がチャージできたので、これでまた頑張れます」


「先輩も、私のことチャージできましたか」


(若干秒無言)


「良かったです。では、今日も一日、楽しかったです。ありがとうございました。」


「また後で。おやすみなさい。」

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