運命だと決めるなら -飛躍少女-
松井ぽてと(クロノフォビア)
第1話 兄弟
人間は時に
* * * * * *
「行方不明事件?」
夕暮れの生徒会室。
年期の入った書物が整然と収納された本棚と生徒会運営方針が書き連ねられた黒板は
その生徒会室に不釣り合いな
「
充分な知性と教養を兼ね備えた人物。
本校を代表する生徒会長。
それが士季の双子の兄、
もう何度も見慣れた兄の顔。改めて見ると、ひときわ
不良と生徒会長。
この絵面も傍から見れば決して混じり合うことのない二人のように見える。
「そもそも、学校に来ているのならば授業を受けるというのが生徒としての本分です。それが
さきほどまで授業をさぼって
早急に士季に伝えなければならない要件があることは
士季は本題に入るよう
「わざわざ説教する為に俺を呼び出した訳ではないだろう?」
そう問う士季に、綺羅は
「ええ。本校の生徒から行方不明者が出ました。昨今、巷を騒がせている
あっけらかんと即答した。内容が物騒であるにも関わらず眉ひとつ動かさずに答えている。生徒会長である綺羅にとって事件の内容は耳にタコができるほど聞いていることであろう…。この落ち着きようも
「行方不明者は決まって高校生。生徒たちは別々の学校に通う生徒たちで共通点や接点は一切なし。考えるだけでも謎が深まるばかりです」
もう何十回となく聞いたフレーズだ。ホームルームで担任が
「今日で行方不明者は18名。本校に影響が出るのも時間の問題と思った矢先の出来事です。知っていますか? 3人の生徒が失踪したという話は?」
「ああ…、今朝の緊急職員会議はそういうことだったのか? 随分と対策に乗り出すまでに時間がかかったな。もたもたしている間にうちの学校から3人もの失踪者を出してしまったんだ。きっと今ごろ対応の遅さで世間から
「士季。ひと様の不幸を
ちっ…。うるせえな…。声に出さずとも無意識に心から
ひとつ屋根の下で共に暮らしているからこそ分かる。家庭的な面をもつ温厚な兄と学校生活での
「本題に入る前に、前知識として頭に入れて欲しいことがあります」
「なんだよ?」
「今回の事件はただの事件ではなく色々と複雑な
“お
これがこの兄弟にとって普遍的な光景かつやり取りであった。
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