第28話 過去と未来

名取先生、このような立派な砂絵を我が病院に寄贈していただきありがとうございます」

「こちらこそですよ、九条院長」

 二人の男が病院の入口に飾られた大きな砂絵を眺めていた。

「青い空、海、砂浜、そしてこれは……少年と少女ですか。とても明るい表情をしている」

「はい、この病院に初めて訪れる方、そして長く滞在する方……私はこの病院に居る全ての方に明るい気持ちになってもらいたくてね。この病院の近くには海がありませんが、いつか元気に退院したあかつきには……まぁ、人それぞれ行きたい所があるでしょう。それを生きる原動力にして頂ければと思います」

「ほほう。そういえばこの二人に名前は無いのですかな?」

「ありますよ。少年の名前はフィガロ、少女の名前はフィレオです。題名は……」

 

 二人の男がその場を去ると、入れ違いに小さな男の子が走って来た。

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