第27話 一人にしないで

 フィガロは、フィレオのコサージュを願いを込めて抱きしめた。

 

「もう一度、私を、見てほしかったな。砂絵の私、を」


「フィレオ、一緒に帰ろう、砂絵へ」


 その言葉を発した瞬間。フィレオの身体は光を放ち、初めて出会った頃のフィレオへ戻った。フィレオはフィガロに抱きよった。


「ごめん……なさい。もう一度会いたくて、だけど真人はもう目を覚まさなくて。あなたの意識だけ私は閉じ込めてた」

「いいんだ。毎日会っていたのに急に来られなくなった方が悪いだろう?」


フィガロの笑顔に、フィレオは子どものように泣きじゃくり、キスをした。

 

 砂絵が光りだす。真っ白なキャンバスになった世界は二人を歓迎している。

 

「もう、一人にしないで。もう、一人にさせないで」


 フィガロはフィレオを抱きかかえ、キャンバスへと還っていった。

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