第23話 病院
「ん……」
ひんやりとした感触。水のものではない。これは……
「大理……石?」
先に起き上がったのはフィガロだった。目の前には大きな砂絵が飾られている。空と、海と、砂浜。綺麗だけど、何かが足りない。
「……っ!フィレオ!」
隣に倒れていたフィレオはゆっくりと身体を起こす。フィレオが無事なことを確かめ、フィガロはフィレオを抱きしめた。
フィレオはフィガロから感じられる温かさを忘れないように抱きしめ返した。これが最後になっても良いように。そして立ち上がり、再び二人は手を繋いだ。
「私の手を離さないで、お願い」
フィレオは再びフィガロの手を握る。フィレオは砂絵をちらりと見た後、歩き出した。
「ここは……病院みたいだね。誰かに見つからないようにしないと」
フィガロの独り言にフィレオは何も言わず、広い病院を歩き回った。迷いなく、まるで此処に全ての答えがあるように。
とある病室の前で足を止める。入院しているのは「春馬 真人」という人らしい。大きな個室で、全身をチューブで繋がれている。大きな病気を患っているのだろうか。
「フィガロ……顔、見える?」
一気に部屋が明るくなった。驚く間もなく、鏡があることに気が付く。自分の顔をじっと眺めてから、真人の方を見た。
「この人、僕にそっくりだ」
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