第22話 誰かの記憶

「戻って来い!頼む!!」

 医師だろうか、患者に馬乗りになり必死に心臓マッサージをしている。

「お願い……お願い!!」

 女性と男性は肩を寄せ合いその様子を見つめるしかない。

 皆で患者の名前を叫んでいる。点滴の管が揺れ、ベッドが壊れるほど跳ねた。

「先生、もう時間が十分経っています!」

 それでも、心肺蘇生を誰もやめようとはしなかった。

 やがて、何も聞こえなくなった。今度はすすり泣く音がする。

 あの患者は誰だっけ。

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