第21話 終わらない海

 驚いている暇などない。二人は砂の山となり、最初にフィレオ、最後にフィガロが扉の下から脱出した。初めて見る扉の向こうの世界、想像はしていたが、やはり一面灰色だった。

「こっち」

 フィレオに手を引かれ、二人は走り出した。途中何体かのロボットに出会ったが、フィレオが全て砂にしてしまった。そして、光の見える所まで来たとき、フィレオは足を止めた。

「どうしたのフィレオ?あの先には何があるの?」

 二人はゆっくりと光の方へ歩き出す。あまりにも光が眩しくて、目を閉じながらフィガロはフィレオの手を離さないように歩いた。フィガロが目をゆっくりと開ける。すると──


「海じゃないか!」

 

 フィガロは叫んだ。ここは、夢で何度も見た海。後ろを振り返ると何もなかった。ただフィガロとフィレオだけが孤島にいた。

「海は、夢じゃなかったの」

 その場にへたり込むフィガロに、立つように促すフィレオ。

「行こう、出口へ」

「出口なんてあるもんか!」

 混乱するフィガロを見て、フィレオは悲しげな表情を浮かべた。でも、その手を離すことは無い。フィレオはフィガロの手を引き、海へ向かう。

「海へ行くのか?やめろ!溶ける!海に流される!」

 その時、フィレオの手を握る力が強くなった。フィレオは何も言わず、フィガロは一緒に海へ入った。足から徐々に体が海へ広がっていく感触。夢で一度味わった恐怖。波にさらわれ、太陽を見つめることしかできなかった──

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