第17話 砂の身体
何度も見た夢の中、フィガロはフィレオを見つけようと砂浜を歩いていた。そして、フィレオが居ないことに気が付く。
「今日は居ないのかな」
ふと、フィガロは海へ目をやる。砂になったら海を泳げるのだろうか?好奇心に負け、海へ進んで行くと、水面に映った自分の顔が揺らぎ、あっという間に砂浜の一部となった。
「フィガロ、砂になれたね」
フィレオの嬉しそうな声が、もうどこにあるのかわからない僕の耳に響いた……
最悪の寝起きの後、フィレオは扉の前に投げ出された人形のように膝を抱いて座っていた。フィガロは冷や汗でびっしょりになった自分の身体を確かめる。砂?僕はもう砂になってしまったのか?フィレオは不思議そうにその様子を眺めていた。
「体調、まだ悪い?」
「フィレオ、僕はもう砂になったの?」
フィレオはきょとんとしながら否定した。フィガロはこれからのことを恐怖し、フィレオは期待している。二人の感情はまったく噛み合っていなかった。
フィガロは汗をタオルケットで拭いた。これ以上フィレオを待たせたら消えてしまうような儚さを嫌と言うほど知っている。そして恐怖に怯え続けるくらいなら、フィレオと同じ存在になったほうがいい。そして願う事なら……
「フィレオ、僕とずっと一緒に居てほしい。僕はもう砂になるって決心したよ。それで、僕は何を」
フィレオはフィガロを抱きしめた。
「これであなたの願いも、私の願いも、叶うから」
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