第16話 フィレオの夢

 冗談交じりのつもりだった。するとフィレオは回るのをやめたかと思うとフィガロの鼻先まで顔を近づけ、今まで見せたことのない笑顔を見せた。

 フィレオはフィガロの肩を持ち、嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねた。その度に花びらがひらりひらりと地面に落ち、フィガロはフィレオの喜びようにつられ、一緒に飛び跳ねていた。

 

「フィガロも砂になって!」

 

 フィガロは現実へと引き戻される。砂になる?砂になったらもちろん人間では無くなる。それでいいのか?しかし、此処から脱出できるかもしれない。問題は脱出した後だ。フィガロはこの部屋しか世界を知らない。脱出できたとしてもこの外はどうなっているのか?フィレオは知っているのか?そもそもどうやって砂になるのだろうか。魔法?改造?そしてフィレオの正体。わからないことだらけ。フィガロには考える時間が必要だった。

「フィレオ、ごめん。今日は体調悪くて……明日でもいいかな?」

 はしゃいでいたフィレオが、一瞬動きを止める。

「そっか、明日また来るね。フィガロ」

 フィレオは来た時と同じように砂となって扉の下をくぐって行った。そうだ、夢でも会えるじゃないか。その時にどうやって砂になるのか、脱出したらフィレオは何処へ行こうとしているのか聞こう。

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