第13話 砂の少女

「それ、美味しい?」

 食事の喜びを忘れかけていたフィガロは青いゼリーと点滴に似た液体を飲み干すと、喰えたもんじゃない。と感想を述べた。

 フィレオはいつもどのようにこの部屋に入って来るのか?フィガロの疑問は尽きなかった。扉が開き、ロボットが帰っていく。

「ねぇフィレオ、どうやってこの部屋に来たの?」

 その問いに、フィレオは無言で扉を指さす。

「扉から出られるの!?」

 興奮冷めやらぬフィガロをよそに、まっすぐに扉を指さしていたフィレオの指は、段々と下へ降りてゆき……扉のわずかに開いている下の部分に狙いを定めた。

「あ、あんな隙間から出られないよねぇ?フィレオ」

 振り返るとフィレオは扉の前に居た。


「フィガロ、私を見て」

 

 笑顔のフィレオは、頭の先から身体が崩れ落ち、砂になった。 

フィガロは驚き、思わずベッドの上まで避難してしまう。大量の砂には色がついていた。薄い橙色、黒、白、全てフィレオの色なのだろうか。その砂たちが混ざりあいながら扉のわずかに空いた下のスペースから出て行く。あれは──

 フィガロはとっさに身を縮めてベッドにもぐり込んだ。体の震えが止まらない。自分が少女だと思っていた、女神、光、人間だと思っていた存在が、まさか。

 

「砂、だったなんて」


 目を閉じて無理やり眠ろうとするフィガロ。彼女はどうやって、何故砂になったのか。その瞬間が頭から離れなかった。

 扉越しにフィレオが佇む。

「フィガロも砂になれたら……」

 その声は、機械が刻む一定の電子音にかき消された。

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